女王陛下と呼ばないで

□女王陛下と呼ばないで
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「なんの話しをしてるんだ?」


その声に胸が高鳴った。

姿を見なくてもわかる。


彼だ。


「ふふっ。女王陛下、騎士様のお出迎えよ★」



雪ちゃんがそう言ってからニコリと笑いながら去っていった。
なんか嫌な笑顔だな。



雪ちゃんの言う通り、僕と彼は…




女王陛下と騎士様の関係。





学校ではその名が出回っている。


いつも僕が彼に護られているからだそうだけど…


彼、葛西(カサイ) 誠司は確かにいつも側にいる。


この関係はもう四年も続いている。



「部活に顔出すなんて久しぶりだな」


言いながら近づき、僕の首から下げられていたタオルで額の汗を拭く。

その行為は近くに誠司を感じて焦ってしまう。

平常心。


平常心。



「誠司ったら、自分のタオルで拭きなよ!」


焦りを一生懸命に隠して僕は言う。

でも、誠司はそんな僕に気付かないで優しく微笑んでくる。


だから、その笑顔は反則だよ〜。





その微笑みは、僕が一番好きな誠司の表情だ。




僕と誠司は出会ってからもう四年経つ。


その頃から女王陛下と騎士様の関係にある。と、さっきも言っただろう。



周りは僕らが付き合っていると勘違いしてるけど、僕達の間にそういった甘いものはない。


正に女王陛下と騎士様だ。

誠司は僕の側にはいるけどそれだけ。


今みたいに僕を戸惑わせる行動は時々取るけど、誠司からそういった感情があるのかは一切聞いたことがない。

だから僕も気持ちは伝えられない。



こんな関係も四年も続けば辛い。





相手のことを想うのは僕だけみたいだから。





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