おはなし

□滴から出来るもの。
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滴が一滴、二滴、三滴と、落ちたところは池になる。
私の身体は池の中。
私の上には赤いくつ。
小さな少女が泣いていた。
この子は度々やって来る泣き虫さん。
いつも泣いているのだもの。
少女の足元に池はいつしか出来ている。
でも地が水分で洪水になることは無い。
私は土に吸い込まれることなく私なりの形になるから。
私はその度に「大丈夫?」とこの子に優しく話しかけるわ。
「サキちゃん、大丈夫?」
「え、何が?」
ぼんやりとこたえた。
この子ったら、私が私なりの形になったときには泣き止んでいるのだから、おかしなものね。
強がり言ったって私が証拠そのものなのに。
「独り言よ」
「変なの。だいじょーぶに決まっているじゃない。きりのお姉さんこそだいじょーぶ?」
私は思わず、ぷっと笑ってしまいました。

「私はサキちゃんにしか見えてないから大丈夫」
私は霧だから。
「??」
「だから気を付けてね。周りから怪しまれないように。独り言は行き過ぎると人目に付くものよ」
「大人だったらね。わたしは、子供よ。大人なんて誰も相手にしないし気づきもしないわ、おかしなこと言ったって軽くあしらわれるだけ」

この子は強い、でもこの子の悲しみは全部私の中にある。
この子が何故泣いていたのかはわからない。
ただ、私の姿がゆっくりと消しゴムの様に消えていく感じ、慣れていること。

サキちゃんは、少しだけ寂しそうな顔をしていた。

「またね」

大丈夫よ、貴女にはしっかり影が出来ているわ。



END.

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