おはなし

□捨てうさぎ
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一匹のうさぎ、しかし本当にただのうさぎかと怪しまれるようなうさぎ。その理由はしゃべれるということと奇妙な表情の二点に集約された。
うさぎは一人の女性にうさ夫と言う名を貰っていたため共に行動する主人(うさ夫にとっては相棒)との離脱が可能となった。
うさ夫は今まさに単身行動をしていた。

「え、えーー。ここで待ってるって言ってたのに、い…いない」


うさ夫はハトと別れた後再び森の中を引き返していた。
常に夜のこの森だが今や外も夜だから代わり無い、途中虚ろな女性とすれ違ったがうさ夫は髪の長さで違うと判断した。
村の方に向かっていくのを見てやっとこの女性があのログハウスにいた女性だと言うことにうさ夫は気付いた。
「雰囲気が違いすぎて気づかなかった。それだけでべつじんに見えるよ」
うさ夫は特に気にせずランランラ〜ン、ルンルンル〜ンとスキップしながら名付け親を探しました。
―ランランラ〜ン、ルンルンル〜ン★
「むー」
―ランランラ〜ン、ルンルンル〜ン♪
「一体どこに」
うさ夫は声を無視して隅々まで探しました。頭の中のマップが殆ど埋まるそのとき。
「きゃははははは☆」

ついにうさ夫はカチンと来ました。
「もういいよ!なんだよこの声、くるなよじゃま。このピーやろう!」
うさ夫はたまらず走り出しました。遠くで、ああまって〜と聞こえたけれど気にしない気にしない。

(全く、これじゃハトのにのまえだよ)
あらかたこの迷宮とも言えるほどの迷いの森を探し尽くしたうさ夫は1つの結論に至りました。
とっくに帰っちゃったんだ。この森にはもとから迷ってなんか無かったんだ、と。
うさ夫はそれなら納得とついに森を出ていくことに決めました。一週間と丸一日うさ夫はこの森で探索をしていた訳だが食料には困ることが無いくらいこの森は豊富でした。
うさ夫にとっては草食い放題、木かじり放題と正に楽園そんな森を惜しんで外へ出たときには空は薄ぼんやりと青くなっていました。
「む?」
はるか向こう、向かいの村から長髪を揺らめかせる一見普通の女性、うさ夫はあのときのログハウスのノラと言う女性と今度は気づきうさぎ特有の人懐っこさで駆けていこうとした。
が、九十度直角に折れて脇道へ隠れた。
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