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□甘酸っぱい嘘つき
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コロコロ…と目の前の床をオレンジ色の球体が横切っていく。

それは部屋の端まで転がると、壁にぶつかる前にUターンしてコロコロ転がって転がした人間の元に戻る。

球体が戻っていった場所、そこには茶髪の男が座っていた。

男の手に収まった球体は、また転がされる。

コロコロ…コロコロ…。


先程からずっと何回も続けられている光景……そろそろティエリアの苛つきは頂点に達そうとしていた…。




「ロックオン!!目障りなのでやめて下さい」

座っていたベッドから立ち上がって、床を転がっている球体をむんずと掴み上げた。

「イタイ!ロックオン、タスケテ!タスケテ!」

悲鳴を上げ助けを求める球体に、更に気分を害され、掴む手に自然と力が入る。

その行動に床に座っていたロックオンは立ち上がり、ティエリアの手から相棒を取り上げた。

「こーら、ティエリア。ハロをいじめなさんな。可哀想だろ?」

彼の腕の中に収まったハロはパタパタと耳を動かしている。
その言葉を無視して、ふんっとそっぽを向いたティエリアは、再びベッドに腰かけた。

ハロを部屋の隅に置き、ロックオンもティエリアの隣に腰かける。


「何をそんなカリカリしてんだ、うちのお姫様は?」

「……別にカリカリなんてしてません」


(いや、してるだろーが)

目を合わせないティエリアに苦笑いしながらロックオンは天井を見つめた。




「なぁ…ティエリア、俺のコト…好き?」

「な…!!」

唐突にそう訊ねるロックオンに、ガバッとティエリアは彼を振り向く。

「突然何を言い出すんですか!!」

真っ赤な顔をして隣に腰かける男を睨みつけた。
睨まれた本人は、それを何処吹く風と受け流し、それどころかその赤い瞳を覗き込むようにして言葉を重ねた。

「俺は、好きだ。愛してるティエリア」


あと少しで唇が触れる…という距離で告白され、ティエリアは瞳を大きく見開いた。
蒼翠の瞳とパチリと合い、すぐに床に視線を落とす。


(どうして…この男は恥ずかしげもなく…いつも平然とこんなことを言うんだ…!!)


ロックオンはじっとティエリアを見つめて、彼の答えを待っている。


すると、突然ティエリアはロックオンを突き飛ばした。


「おっ…!!……ん!?」

いきなりの力に、後ろに倒れかかる彼のシャツをぐいっと引っ張って、その唇にティエリアは、己のそれをぶつけるようにして重ねた。

触れるだけの、子どものような口づけ。



ぷはっと唇を離したティエリアは、唖然とするロックオンに向かって真っ赤な顔で言った。


「貴方なんか……大っ嫌いです!!」








(ティエリア…)
(……何ですか?)
(嫌いなヤツに何で抱きついてんだ?)
(…くっ…万死…!!)




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Webアンソロ企画『僕の世界は君のもの!』様に提出致します。
今回は素晴らしい企画に参加させて頂きありがとうございましたm(__)m

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