以前、メルマガで配信したちび昌と紅蓮です。
『罪深き永遠を誓う無垢』
――だいじょうぶだよ。ずっとそばにいるから。
それは昔に交わされた約束。でも、それが叶うことはない。
それを彼は誰よりも知っていた。
自分を見つめる金色の綺麗な瞳。優しくて、温かくて。とても大好きな瞳。
でも、時々それが違う色を映す。どこか頼りなくて、切ない色を。
それが昌浩はどうしようもなく、悲しかった。
「どうしてれんは、かなしそうなの?」
舌足らずな声で問い掛けた。
子どもは思ったことをすぐに声に出す。昌浩もその例に漏れず、しばらくはじっと見ていたのだがついに声に出したのだ。
「悲しそう?俺がか?」
「うん」
怪訝そうな顔をしている紅蓮に頷く。
少し離れた柱に背を預けていた彼は立ち上がり昌浩に歩み寄った。
近くまでやってきた紅蓮はしゃがむと昌浩の頭を撫で、目線を合わせる。
「別に悲しくはないんだがな…」
子ども特有の敏感な部分で自分でも気付かない何かを感じ取ったのか。
「いまもちょっとだけかなしそうだよ」
「…そうか?」
いつも一人だった騰蛇には慣れないことだった。同胞にも自分をじっと見つめ、こんなこと言う奴はいない。近寄りもしないのに無理な話だった。
昌浩はふいに笑った。すべてを照らし包み込む太陽のような笑顔。
騰蛇は思わず、眩しげに目を細める。
笑顔のまま昌浩は言った。
「だいじょうぶだよ。ずっとそばにいるから」
はっと息を止めた騰蛇に手を伸ばす。その小さな手は確かに紅蓮の指を掴んだ。
――そうか。
騰蛇は理解した。なぜ自分が無意識に悲しそうな表情をしていたのか。
この子との別れがくることを知っているから。
何度も見てきた人間の死。長い時を生きる自分と人間では共にいられる時間は僅かで、とても儚い。
この子のように無垢でもなければ幼くもない。
死という存在を理解しているし、受け入れるしかないことも分かっている。
だが、その言葉を無理だと否定することはどうしても出来なかった。
「…ああ、そうだな」
ずっと傍にはいられないけれど、生涯この子の存在が自分の中から消えることはないだろう。
いつまでも色褪せない大切な記憶として胸の一番奥に在り続ける。
それは残酷なほど優しく温かい約束。