僕たちのお姉様。

□ラブミッション?!
1ページ/1ページ


―僕らの計画は、その瞬間から始まった。




「ちょっと、二人ともっ!…カナっ!!」

背後から聞こえてきた声に、僕らは反射的に振り返った。
一瞬僕らが呼ばれたのかと思ったけど、どうやら違ったみたい。
振り返った視界を横切っていったのは、セーラー服を翻した、見知らぬお姉さんだった。
彼女は僕らの脇を駆け抜け、少し先で立ち止まった。
「もぅ……二人とも、速過ぎるわ」

僅かに息をきらし、彼女は目の前の二人……僕らと同い年ぐらいにみえる、男の子と女の子に向かって困ったような笑顔を向ける。
目線を合わせるため、道端にしゃがみこみながら。

「だってカナが先いっちゃうんだもん」

「カナが急がないと、っていうからだよ」

「はいはい、わかったから。そんなに急がなくても大丈夫よ。私を置いていかないで、ね?」

諭す彼女の言葉に、二人は仕方ないなぁ、という体で頷く。
そうして三人で、仲良くその場を去って行った。
その姿を眺めている僕達に、気付きもせず。
目すらも合わない、出会いなんて表現するのは無理があるほどの、それはありふれた日常風景だった…けれど。

「ねぇカナ」
「ねぇハル」

お互いに、顔を見合わせて。

「「カナって結局、どっちだったんだろうね」」

二人して、首をかしげ。

「まぁ、どっちでもいいけど」
「うん、ちょっと気になるけど、重要なことじゃないよね」

にっこりと、笑う。
それは、傍から見ればまさに天使の微笑み。
けれど僕らは、お互いがそんなにきれいなことを考えているわけではないことを知っている。
最高のいたずらを思いついた、そんな顔。
考えていることは、間違いなく同じ。

「あのお姉さん、いいよね」
「うん、いいよね」
「「気に入っちゃった」」


僕らにとってそれは、誰が何と言おうとも、決定的に重要な。

運命の出会い、だった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ