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□明日
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ヒカリとジュンはいつものようにヒカリの綺麗に整頓されている部屋でアイスを食べていた。
カーテンがひらひらと揺れて部屋の中に入って来る。
いつもはうるさすぎるくらい喋るジュンが今日は一言も喋っていない。ヒカリは不思議に思いながらもアイスを食べながらちらちらとジュンの方を見て気にしていた。
ジュンが黙る時は、大抵何かを考えている事だ。聞いてみたいとも思うけど、ジュンが真剣に考えている事を邪魔しちゃいけないような気がしたヒカリは飲み物とお菓子でも取りに行こうと思いつき、そうっと部屋を出ていこうとした。
が、ドアを開けた瞬間後ろから抱きしめられた。


「え、なに?私飲み物取ってこようとしてるだけだよ。別にどっかに行ったりとかしないよ」


ヒカリがそう言うとジュンは腕を離し、同時にヒカリからも離れていった。
何か言ってくれればいいのに。これじゃあ何もわからない。
ヒカリはそのまま部屋を出て階段をゆっくりと降りるとキッチンの隅にしゃがみ込んだ。
ジュンの考えている事がわからない自分が、ジュンの傍にいていいのか。
なぜ何も言ってくれないのか。ジュンだって一人の人間だ、そんなことはわかっている。
でも、特別に思ってくれているならどうして一人で考えているんだろう。どうして私に話してくれないんだろう。
悩みがあるなら相談してくれればいいのに。私のことが好きだと言うなら、何でも話してくれればいいのに。
自分を非難するつもりだったのにいつの間にかジュンを責めていた自分に気づいてヒカリは泣きたくなった。
いつもこうだ。

ヒカリは立ち上がるとコップを二つ出しそこに緑茶を注いだ。
どんなに頑張っても、完璧に二人の緑茶の量を同じにすることはできない。
そんな馬鹿なことにどれくらい時間を使ったのだろうと思いながらヒカリはため息をついた。
ジュンがいつも通りだったら私もいつも通りでいられるのに。
またジュンのせいにしてる。
ヒカリは両手にコップを持つと自分の部屋の前までやってきた。
私がいつも通りに接していればジュンもいつも通りに戻ってくれるかもしれない。
よし、いつものように明るく。
ヒカリは息を吸うと、部屋のドアを開けようとした、その時。
急に部屋からジュンが出てきてどんっという音とともにヒカリは床に叩きつけられる。
コップが床に落ちたが割れることはなかったらしく鈍い音がヒカリの耳に聞こえてきた。それと同時に、自分にお茶がかかったらしくびしょぬれになっていることにも気づいた。


「ヒカリ!ごめん、俺、ヒカリが遅いから心配でさ、」


そう言って助け起こしてくれるジュンはいつも通りのジュンだった。


「俺が廊下ふくから、ヒカリは部屋の中で着替えてなよ」


ジュンにタオルを渡してヒカリは部屋の中に入った。
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