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□99.9%
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「君の知識量、凄いよね。見るからに馬鹿そうな顔してる癖にさ」

「私は全然ダメなんだよ!でもコウキ君が教えてくれて…」


コウキ。聞き慣れない名前が僕の頭にぐんぐんと音を立てて響いた。
そいつがヒカリに色々教えて、そいつがヒカリの友達で、そいつがヒカリに好意を抱いている確率…


「99.9%」

「な、なにが?」

「気にしないでいいよ」


彼女の不安そうな表情に僕の中の何かが疼く。
もっと、困らせたいと思っている自分を必死に抑えながらヒカリに笑いかけた。
そうするとヒカリも笑い返してくれる。
あれ。困った顔も良いには良いけどこっちの方が好きかもしれない。


「ね、99%って何が?もしかしてネジキが私のこと好きな確率とか?」

「はぁ…」

「何でため息つくの!?笑ってよ!」


冗談でそういうことを言われると何とも複雑な気分になる。ため息をついてしまうほど複雑な気分なんだ。
彼女はそんな冗談が言えるくらいにしか僕のことを思っていないっていうのが丸解りだ。

親のいない自分の家の自分の部屋に男子の友人を通す時点でもう解ってしまうけど。


「じゃあ、ネジキが彼女欲しいと思ってる確率」

「そんなのわざわざ口に出さないよ」

「そっか。口に出すってことは私に聞いて欲しいことなのか」


変な所で頭が回るなぁ。彼女が言うには知識はコウキってヤツ、バトルはジュンってヤツに特訓してもらったらしいけど彼女自身の才野もかなりのものだと思っているのは、少し買い被りすぎだろうか。


「コウキとジュンの話の後に言ったから、二人のことが気になってるとか?でもそれが99%って変だよね。そろそろ正解言ってよ」


その上目使いは狙ってやっているのかそれとも違うのか。どちらにせよ抜群の破壊力があることは確かだ。
でも僕はそこでやられるような人間じゃない。主導権を握るのは僕なんだから。


「人に物を頼む時は…」

「お願いしますバトルファクトリーフロンティアブレーンのネジキ様ー」


棒読みされた。僕の輝かしい称号を。

言い直させようと思ったその時、彼女の携帯の着信音がなった。
自分のポケモンの鳴き声を着信音にしている彼女は相当な親バカだ。
ほんの少しの間しか一緒にいないレンタルポケモンにだって精一杯の愛を注ぎ込む。
そういうところも僕は好き…なのかもしれない。


「もしもし。あ、コウキ君?えっとごめん!今日は友達が家に来てて…うん、本当ごめんね。うん、それじゃ、またね」


ごめんが二回、またねが一回。
ヒカリはコウキとかいうヤツのことをどう思っているんだろうか
そして今のは何の電話なのか。多分遊びの誘いか何かなんだろう。
でも年頃の男女が二人で遊ぶというのはおかしいと思う。まるでデートだ。
いやでも僕とヒカリも今二人なわけで…。
周囲から見たら誤解される確率、100%。


「何で僕を家に入れた訳?」


えっ、とヒカリは持っていた携帯を落としかけた。宙を舞ったヒカリの携帯を僕がキャッチして中を見てみる。
ヒカリが何か言っているが僕は聞こえないふりをしてヒカリのメールフォルダを見る。
Negikiというフォルダがあって、中を見ると僕の素っ気ないメールが並んでいた。
一行以上いっているメールが殆ど見当たらない。僕はメールが苦手だ。というか、面倒。
というか、僕の専用フォルダを作っているということは、もしかして。
一応確認してみるが、他は友達やら家族やら。
どうやら専用フォルダは僕だけのものらしい。


「ヒカリってもしかして僕のこと…」

「返して!」


ヒカリが手を伸ばして携帯を引っつかもうとして来たが、僕はそれを華麗にかわしてヒカリに笑みを投げかけた。


「何で僕の専用フォルダがある訳?」

「別に深い意味はないよ!好きとかそういうんじゃないから、返して」

「理由になってないからダメだよ」


ヒカリは目に涙を浮かべながら僕を睨みつけてくる。
やっぱり、この顔は良い。けど、


「僕は好きだよ。ヒカリのこと」


そう言って携帯を投げて返す。
僕は一分一秒でもこの場から離れたくて、ヒカリの家を出てムクホークを出してその背に乗ってフロンティアまで帰る。
遠くでまたメールするからと叫ぶ声が聞こえた。

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