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□消えてしまう
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望むならば、この命は永遠を知らない。


生きるなら欲を捨てるべき事。


止まる事の知らない鼓動も、いずれは止まる。


ならば、止まないうちは、

側にいさせてと切実に願う。



「一度動いたら、いつ止まるんだろうな。」


地球は、今でも回ってる。

人類の力では、止められる訳もなく、

その中で無力に生きていく。


「訴えたい事はたくさんある。けど、勉強したくないから政治家にはなれねぇ。」


「先輩。」


「非力だな。」


「キスしていい。」


「なっさけねぇ。」


「…するよ。」


「泣いていい?」


ブン太の語るような会話を止めるように唇を重ねた。



「………。」



唇を離し、お互いの顔を見る。



「、ごめん。」

「いえ、」


最近の先輩は、病んでるような事ばっかり言ってきて、聞けば


『分かんねぇ…。』


しか答えないし、

どうしちゃったかがよく分からない。


この歳でそんな事考えちゃうって、疲れるでしょ。


丸井先輩は、真っ直ぐすぎなんだよ。

だからそんな事考えちゃったり、自分を責めたり、一人で抱え込んじゃったり…。

でも、誰にも知られたくないとか思っていながらも、誰かに気付いてもらいたいとか思ってて。


人を信じられないとか言って、
こうして俺を頼ったり。

で、自己嫌悪に陥って、自分をまた責めて。


真っ直ぐなのは良い事だけど、時と場所によって、それは本人も他人も傷つけて。


「赤也。どっか行こ。」

その後は、いつも暗い暗い部屋から逃げ出すように外に出る。



一緒に手を繋いで歩く。

それだけで心が救われた気持ちになる。

って先輩が言ってた。


これが今の俺に出来る精一杯。


もっともっと俺が大人だったら、

自分で満足いく程に先輩を救う事が出来たんだろうな。

先輩の悩みをもっとうまく聞く事が出来たんだろうな。


「…ごめん。」


ぽつりと出てしまった言葉。

先輩に聞こえてしまって、目が合った。


「…どしたの?赤也…。」


とっさに目を離してしまい、手を握る力を強くした。


「大丈夫…?」


「ええ。平気っスよ。」


今にも泣きそうで、力無く笑えば、先輩の顔が、いっそう暗くなった。


「平気だから…。」


衝動的に先輩を抱きしめれば、ぬくもりが伝わってきて、それだけで俺の涙腺崩壊。



「ごめんっ…。」

情けなくも先輩の肩に顔を埋めて涙を流す。


「赤也、なんで泣いてんの。」

先輩は静かに俺の背中に腕を回してくれた。

背中にも伝わってくる温かさに、ドボドボ涙が重なる。



こうなったのも、全部先輩のせいだ。

先輩に引きずられた。


でも俺は先輩を恨まない。



だって俺達は、


運命共同体だから。












〜end〜





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