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□心底笑った。
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白い白い、海の側にある家。


その中で、ソファーに赤也と俺。隣に座る。


俺ら以外、誰もいない空間。


四角の形でオシャレな窓もびっちり閉めて。

白いカーテンの隙間から海が見える。





俺は、隣にいる赤也の肩に寄りかかった。



「どうしたの。先輩。」



こういう空間にいると、気が狂う。



いい意味なのか、分かんねぇけど、なんだか感傷に触れる。



「赤也…あったかい。」


外は極寒の地。

部屋の中の暖房器具に俺達は温められている。



あぁ、痛い痛い。

苦しいよ。赤也。



俺は、眉を顰めてぎゅっと目を瞑った。





「………。」



あぁ、優しい言葉もない。


ただ肩に手を回されて、頭を撫でられた。



ああ、痛い。ツラいよ。



優しさが、怖い。





「なんで急に、海に来たいなんていい出したんですか?」



「知らね…。」



ホントにホントになんとなく。


冬の海に来たかった。



赤也と二人で


来たかった。





「、俺さ、小さい時、海好きだったんだよ。」



力無く目を開き、ぽつりぽつりと語り出す。



「で、家族みんなで海行ったんだよ。」



悲しそうに。でもどこか温かく語る。


「、うっすら覚えてる…みんなで笑い合ってさ、無邪気に遊んでさ。」



目を伏せて、話を続ける。


「温かかったな…。」



俺は、自然と上目使いで赤也を見た。



「ねぇ、赤也。」



気付けば外は真っ暗になっていて、明かりも点けていない部屋で、頼れるのは月の光だった。



「ん?」









「過去なんて捨てちまえばいいと思ってた。」



俺はそっと瞼を下した。



「でも、捨てきれなかった。」



(過去があるから感傷に浸れる。)



穏やかに瞼を開けば、


目の前に赤也の顔があった。



唇に、柔らかい感触。



赤也が目を開き、視線があった。


その時だった。









リーンゴーン
リーンゴーン












鐘が鳴った。












「…今日って、何日っスか?」

「…1月…1日。」







二人で唖然とし、目を合わせたまま。



「今年も、シクヨロです。」



「…バーカ。」


赤也がそんな事言うから、なん
か気ぃ抜けちまって、少し笑った。


「赤也。」


もう、止めよう。

過去に囚われるのは、
過去にすがりつくのは、



今を、生きよう。



「先輩。好きっスよ。」

「バーカ。んなの知ってる。」


そう言って、今度は俺からキスしてやった。


赤也に顎を掴まれて、もっと深いキスになった。


「んっ…はっ…。」



咥内を、犯される。



「先輩、好きです。好きです。」


何度も何度も、その言葉を繰り返されて、自然と涙が零れた。




こいつとなら、一緒にいれる。

過去とか、全て、


こいつとなら、

全部 全部、



背負っていける。



















(だからもう少し、感傷に浸らせて。)













〜end〜
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