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□太陽の匂い
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太陽の匂い












―sun―












「せーんぱーい。」

「んー?」



午後の授業、俺ら二人はサボリ。


お互いの頭を向け合い屋上に寝そべる。


空を見れば太陽の光が眩しかった。


思わず目に手をあてる。


「ねえねえ先輩ってばー。」

「なんだよ赤也ー。」



寝転がりながら、目線を上に向け、俺の事を見てくる。



「おいで。」


そう言って赤也は笑った。


「はあ?」


「俺の隣。」


「なんで俺が…」


「じゃあ俺が行こ。」


赤也は立ち上がり、俺の隣に座って俺に見下す形で目線を向けてきた。


「んだよ…。」

「ん?可愛いなーって思って。」


「うっせ。」


手を伸ばして髪の毛を引っ張れば、俺の腕を掴んで手をほどいた。


「痛いっスよー!先輩。」


「俺は可愛くなんかねえ。」


そして先輩は俺とは反対側を向いた。

俺も先輩から目線を外し、空を見た。



「先輩は可愛いです。」



「……。」


ついには反応なし。


まあこれが先輩だし、特に気にしなかった。


「好きっスよ。」


そっと頭を撫でる。



先輩は無反応。

やめろとか言ってこなかった。

逆におかしく思い、先輩の顔を覗き込んだ。


「先輩ー?」



―あ、―



先輩、寝てる。

すやすや寝息たてちゃって。

(きれいだなー…。)

赤髪は風に揺れ、先輩の顔にかかる。

俺はそっと、その髪を耳にかけてあげた。




「あかや…。」

「はっ?」


今、先輩が俺の名前を呼んだような…。

でも寝てるし…。


て事は…、


「寝言、だよな…。」

うわ。うわうわ。どうしよ。


やっべ…嬉しい…。


「先輩…。」


真っ青な空。まっ白い雲。

初夏の風が吹いてきて、ああ、いい天気。



キーンコーンカーンコーン

6時間目終了を知らせるチャイム音。


あと、1分。いや、30秒でもいい。

この時が続けばいい。










                〜end〜
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