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□笑顔
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笑顔
「お疲れー」
「お疲れっス。」
厳しい部活を終え、それぞれ着替えていく。
俺以外。
「あーつーかーれーたー。」
パイプ椅子にもたれかかり、首のかかったタオルで顔の汗を拭った。
「丸井先輩、だらしないっすよー。」
そんな俺に顔を近付け、指でおでこを突いてきた。
「後輩のくせに生意気ー。」
「だって中2ですもん。」
そう言って、こてん、と首を傾けて笑う後輩。
これが可愛いんだよなー。くそぅ。
「―じゃあ、俺達先に帰るから、鍵、お願いね。」
チャリーン
そっと微笑んだ幸村君の手からポーンと投げられた鍵を片手でキャッチする。
「おう。じゃーなー。」
「さよならっス!」
俺はひらひらと手を振り、赤也はペコっと一礼する。
パタンッ
「ふふ…仲いいね。あの二人。」
「たるんどる。」
シー… ン
静まり返った部室内。
俺と赤也だけ。
「先パーイ、俺早く帰りたいんすけどー。」
「先に帰れば?誰も待ってくれとは言ってねぇけど?」
「っ……」
赤也は顔を赤くして俺から目をそらした。
「…あんたとっ…一緒に帰りたいんだよっ…」
だから可愛いんだって。乱暴なその態度さえも。
「はいはい。仕方ねーな。赤也クンは。」
だるいからだを動かし、着替えを始める。
赤也耳まで真っ赤じゃん。
俺はくすっと小さく笑う。あぁもう、かわいいなぁ。
(何であんなに余裕なんだよ…)
Yシャツに腕を通している先輩の背中を見つめる。
(俺ばっかり振り回されてるしさ…)
シャツの上からでもくっきりと形が分かる肩甲骨。
(背、低いのに男らしい体してんの)
しばらく先輩の男らしい姿を眺めていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「赤也、帰ろうぜ。」
余裕の笑顔。
「―っ…」
それさえも、格好いいと思ってしまう俺は、重症だ。
「ずるい…」
「は?」
あー絶対俺今、顔赤い。いや、さっきから赤いけどさ、さらに。みたいな?
「 行こう。」
困ったように笑い、俺の頭を撫でてくる。
全て見透かしてるみたい。
「…スッ。」
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