短編
□甘い罰
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心地よい風が頬をすり抜ける。
木の下から聞こえた自分の名前に、総悟はしかたなく答えた。
+甘い罰+
「総悟」
「なんでィ」
夜。
巡回の途中に逃げ出したのがばれた。
「なんでじゃねェ!仕事サボんなァァ」
「そういうあんたも、ここで何してるんでさァ」
木の幹に手をかけ、ゆっくりと地面に向かう。
さほど高くない木だったので、足が地に着くまですぐだった。
「何でって…。急にいなくなるから心配した」
「これだから過保護は…」
木を降り終えて、溜め息を吐く総悟。
それを見た土方が、総悟の頭に手を伸ばした。
「人の思いやりを溜め息で流すなや」
「…っ」
殴るかと思いきや、その手は優しく頭を撫でる。
「本気で…心配した」
「土方さん」
頭を撫でていた手が腰に回り、総悟の体を抱き締めた。
されるがままに、総悟は土方の胸に顔を埋める。
「すいやせん」
珍しく素直な小さな声。
「心配かけた罰だ」
「…な」
言うか否か、土方は総悟の唇を奪った。
甘く優しく交わされる口付け。
時が止まったかのように、二人は暫くの間その場を動かなかった。
fin.