Maga

□いちばん
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幼馴染の家に行くことが、

いつしか日課になっていた。


「総悟」

「今日は遅かったねィ」

「寄り道してたから」


はい、

と笑顔でケーキを渡すと、

彼は嬉しそうに微笑んだ。


「女は好きだねィ、ケーキ」

「言ってる総悟も好きじゃん」

「ま、否定はしやせん。

皿取って来まさァ」

「うん」


階段を降りる音。

その音はすぐに戻ってきた。

ついでに持ってきたのか、

お盆の上にはジュースもあった。


「今日は何ケーキでさァ」

「それはね……じゃーん」


箱を開けると、

綺麗に加工されたモンブラン。


「総悟の髪色みたいでしょ?」

「なんでィ、それ」

「面白いから買っちゃった」


皿に取り分けフォークを入れる。

それを口に運ぶと、

栗の風味が広がった。


「おいしい、幸せ」

「簡単な幸せでさァ」

「いいの」


再びケーキを口に運ぶ。

出てくる言葉は幸せばかり。


「しあわせ」

「…なら、

俺がもっと幸せにしてあげやす」

「へ」


彼はそう言うと、

私の頬に付いた

クリームを舐めとった。


「っ」

「ねィ?」


頬を紅潮させながら、

私はフォークを思い切り

彼に投げつけた。


いちばんの幸せ。

甘いひと時。



fin.

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