イベント小説
□不思議な遊戯
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声がする。
知ってる声。
頭にくる、あいつの声。
+不思議な遊戯+
「――ご。――おい、総悟っ」
「んぁあ……あっ。おはようごぜェやす、土方さん。
今日も平和で何よりでさァ」
「アホかァ、『あっ。』じゃァねェ!
とっくに朝は終わってんだよ。つか、昼も過ぎて今は夜だ」
真選組屯所。
今日もまた、俺の部屋に土方さんの激高が響いた。
「今日は非番なんでィ。別にいいじゃねェですかィ」
俺はそう言って立ち上がると、厠へ向かおうとした。
が。
「――待てよ」
「なっ、離して下せィ」
土方さんの手によって、それは虚しくも断念する事になった。
「何するんでさァ……」
「まだ話の途中だろ」
そんな事、いつもだったら言わないくせに。
「何かあったんですかィ?」
何気なくそんな事を聞いたら、土方さんは意地悪そうに笑った。
「なんか? あァ、そーだな。…ちょっと、機嫌がワリー」
気づけばもう、俺は土方さんの下にいた。
「……どいて下せィ」
「嫌だって言ったら?」
土方さんの片手で、両腕を頭の上で押さえつけられ身動きが取れない。
「無理やりでもアンタから離れるでさァ」
「やってみろよ」
「…くっ」
力一杯腕を動かすが、手はビクともしない。
「どォした?」
土方さんは、上で意地悪そうに微笑む。
「のやろォ…」
ふと。
「なァ総悟。不思議な遊戯(ゲーム)って遊び知ってるか?」
「なんでさァそれ」
俺が聞き返すと、土方さんが説明しだした。
何と言えば何々、何々と言えば何。
そう順番に答えていく遊び。
「簡単だろォ」
「付き合ってやったら、放してくれやすかィ?」
「あァ。その代わり、総悟が負けたらバツゲームな」
瞳の色が変わった。
俺は息を呑んで、首を縦に振った。
「止まったら負けだ。あと、待ったなし。
いくぞ。――近藤と言えば」
「局長。局長と言えば」
「真選組。真選組と言えば」
土方死ね。土方死ねと言えば。
沖田。沖田と言えば。
「お、俺?」
「…総悟の負けだ」
「ま、待って下せィ」
「待ったなし、ルールだ」
俺の腕を掴む土方さんの力が強くなった。
「痛っ」
「バツゲームだな。総悟」
「その前に、厠に行かして下せィ」
一日行ってないせいか、限界が近い。
涙目になって訴えると、土方さんが面白そうに笑った。
「どこまで耐えれるか…だな」
「―――ひっ」
頭の中が真っ白になり、時間が経ち。
気付けば俺は、気を失っていた。
fin.