お題
□06.欠けた真円
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早く、気づけばよかった。
失くしたもの。
見つからない。
戻らない。
大切な存在。
+欠けた真円+
「大串クン? どかしたの?」
「……最近総悟がな、なんか元気なくてよォ」
気づいて無かった。
知らなかった。
目の前の事しか考えてない。
後ろの事なんか考えもしない。
「優しいんだねェ、あの子の事だと」
「そんなわけ、…あるか」
目の前しか見ない。
「俺は、銀時以外に優しくした覚えはねェ」
「ホントかなァ」
でもそれは、
「たりめェだ」
結局逃げているだけ。
気づいていた。
知っていた。
総悟の気持ち。
「……やっぱり、優しいなァ。大串クンは」
「何が」
「…あの子の事、好きなんでしょ?」
分からない。
俺の気持ち。
「やっぱり……大串クンさぁ、俺と話してるとき、
ほとんどあの子の事話してるって、自覚してた?」
自覚なんてない。
気づこうともしなかった。
「……そんな事」
「大串クン?」
俺の気持ちに気づくのが、遅すぎた。
俺は。
「…行って来いよ」
総悟の事が好き。
「でも…」
もう遅い。
きっと総悟は、傷ついている。
なのに。
今更好きだなんて。
「…もう、いいんだよ」
だから。
気づいたものを。
失くしたものに。
見つけたのに。
失くしたもの。
戻らない。
fin.