短編
□誠の村
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12月24日。
ジングルベル、ジングルベル。
クリスマス。
今日は、クリスマスのお話をしましょう。
+誠の村+
昔々の12月24日のことです。
雪山の奥に小さな村がありました。
そこには、一匹だけ、顔は白ヒゲを生やしたお爺さんで体がトナカイという、
不思議な動物が住んでいました。
名前は、サンタクロース。
でも、村の人たちからは、誠ちゃんと呼ばれていました。
誠ちゃんはその姿のせいか、とても人気者でした。
村の公園に行くと、いつも子供たちと遊んでいます。
「あっ、こっち来んなアル。誠ちゃん」
「そうでさァ、向こう行けィ!」
「イテッ。…ヤロォ、待てガキ!」
「誠ちゃんが来たアル、逃げるネ」
時には、豆まき。
時には、鬼ごっこ。
誠ちゃんは、子供たちといろいろな遊びをしていました。
「あァ…やっちゃったよォ」
「気にすんな、誠ちゃん。やっちゃたもんはしょうがない」
誠ちゃんは、大人にも人気でした。
「同情はしてやるぜ、誠ちゃん」
「やっちゃったよォ…」
子供たちと遊び終わったら、いつもの店で休憩。
断ち切れない腐れ縁の友と一緒に、お酒を飲みます。
でも今日は、いつもとメンバーが違いました。
いつの間にか隣に、長髪を生やした雪だるまがいました。
「誠ちゃん。俺と一緒に村を出て、いいアルバイトをしないか?」
「あァ?」
「ちょっと!そこの長髪の雪だるまっ。なにかってな事言ってんだ」
「だまれ、ゴリラ。誠ちゃんは人気者であることに疲れたんだ。そろそろ転職してもいいだろ」
「うるさいうるさい。誠ちゃんは村のなんですぅ。
村の安全係係長の命令で、誠ちゃんをかってに連れ出す事を禁止する」
「なっ、卑怯な……ならば、誠ちゃん。これを見ろ」
雪だるまは、一枚の紙切れを見せました。
そこには大きな赤い字で、こう書かれていました。
『12月24日の夜。子供たちに夢を与えませんか――?』
「12月24日の夜、つまり、今日の夜。俺と共に夢を与えに行かないか?」
「……あァ、どーすっかなァ」
「誠ちゃん!」
そして誠ちゃんは決めました。
その夜。
村の外に、赤い帽子をかぶり赤いコート着た、誠ちゃんの姿がありました。
「では行くとしよう」
「あァ…やっちゃったよォ」
「いやまだなにもやってない…今からだ」
「………」
雪だるまは器用に誠ちゃんの背に座ると、予め用意してあった白い袋を片手に持ち、言いました。
「進め、サンタクロース」
そして二つの影は空を駆け、雪山の向こうに消えてしまったとさ。
12月24日の夜。
よーく耳を澄ましていると、聞こえてくるはずです。
子供たちに夢を与えにくる、
誠ちゃん――サンタクロースの声が。
――やっちゃったよォ……。
完
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おまけ
銀「はーい。以上、3zからの出し物でしたァ。拍手拍手」
新「で。結局、なんの話だったんですか?てか、僕出てないし…」
銀「まァようするにだな。サンタさん誕生秘話ってとこだ」
神「嫌アル、こんなサンタ。いじめられてたネ」
銀「いじめてたのはテメーだろォ」
近「いいじゃねェか。実際、サンタなんて見たやついねェんだ。ホントはいじめられてたかもよ」
土「そういうことだ。…って、なんで俺まで出ねェといけねェんだ」
沖「土方さん、なかなか役に馴染んでやしたぜィ」
土「だまれ」
桂「にしても、一体誰がこんなしょうもない劇のシナリオ書いたんだ?」
銀「知るか。机の上に手紙つきで置いてあったんだよ。きったねェ字で『やって下さい』って」
神「いい迷惑ネ」
土「だな」
沖「土方さん、なかなか役に馴染んでやしたぜィ」
土「だまれ」
マ「あのー……」
銀「どーしたァ、マダオ」
マ「それ書いたの、俺」
(強制)終