東雲

□君の瞳の上で(制作中)
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重い色をした雲を見上げ、思わず何度目かの溜め息。それを隣に座る男は小さく微笑った。もちろん、笑われれのはムカついたので軽く睨んでおく。

「…何笑ってやがる。」
「別に。なんとなく可愛いなぁって。」
「…果てるか?俺は止めねぇ。」

新しい煙草に火を付るが、爆弾を花火と呼ぶ彼には意味をなさない威嚇だ。

「空模様を気にして溜め息なんて遠足前のガキか…」
「黙れっ、んな可愛いモンに置き換えんじゃねぇよっ。」

あまりの馬鹿げた態度に呆れて腹も立たなくなるし、第一、いちいち怒鳴っていたら大人気ない。さっきまではそんな事を思っていたが、またつい怒鳴ってしまったあたりが絆されているようで、なんとなく情けない気持ちになった。それでも、彼は気にした風もなく言葉を続けた。

「もしくはさ…。」
「…なんだよ。早く言えよ、面倒な奴だな。」
「もしくは…
デート前の恋人かな?」

「…はっ?」

…思わず聞き返してしまった自分を是が非でも呪い殺したい。(十代目を御護りする使命があるからしないケド)大失態だ。すぐに目を逸らし、聞き返してしまった理由については馬鹿(天然)の理解力の無さに伝達の行方をかけた。しかし、おそらく…

「…違ったのか?」

何か含むような笑みを張り付かせて、わざわざ聞いてきやがった。大失態に大決定。普段は鈍いくせに、いらない時だけはしっかり聞き逃さずに意味もしっかり捉えられる質らしい。いらない特技だな、うん。
考え事をしている際に移動してきたのか、向かい側にいたはずの山本が背後から抱き締めてきた。そして、妙に艶っぽい笑みを浮かべているであろう極上音声で耳元で再度囁く。

「…違ったのか?」
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