ss<nztume,yakusizi>
□ハジマリ
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事件のあと多軌は普通の女の子に戻った。祟りを気にせず、人と話せる普通の日常が戻ってきた。道であえば一緒に登下校だってする。今朝も笑った彼女をみたばかりだ。そういえば、教室での多軌を事件の前以来見ていないな。
休み時間に五組の教室を覗きにいった。
「・・・・タキ?」
『ハジマリ』
彼女は独りだった。
祟りと戦っていた時と同じ。休み時間だというのに誰とも話さず、1人椅子に座り前を見ていた。机にはまだ開けていないお弁当箱。
どうして?祟りはもう気にしなくたっていいのに。多軌のいる場所だけが別の空間に切り取られているみたいだ。
「なつ・・・。」
こっちに気づいて俺の名前を呼ぼうとした。最後まで言わずに、困ったような笑みを浮かべる。
その顔があの時と、1人で戦っていた時と似た寂しい笑みだった。
思わず体が動いた。ずんずんと他クラスに入っていく。きょとんとした顔でこちらを見る多軌が可愛かった。その多軌の腕とお弁当をつかみ言った。
「一緒に食べよう。」
返事も聞かずに、入ってきたときと同じように五組の教室を出て行った。
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二人でサークルを書き歩いた原っぱにきていた。お昼休みのときは西村たちがいたから話せなかった。だから一緒に帰る約束をした。
「なぁタキ。」
前を歩いていた彼女はぴたりと止まり、ゆっくり振り返った。また、昼間にみたあの顔。寂しそうな、何か言いたいのに言えないようなそんな顔。
風がさぁっと吹く。
「・・・・夏目くんには本当に感謝してる。」
「タキ?」
なにを今更。あれは俺が多軌を助けたかったから、力になりたかったからやっただけなのに。
「でも、でもね。やっぱり一年は長いよ。」
「どんなに親しかった子でもずっと話してなかったし、クラスの子とはまったく話したことないから。」
少しうつむき言った。
「怖いの。」
そうだ。多軌は一年近く誰とも話さないようにしてたんだ。なら高校に入ってからは誰とも話していないようなものだ。せっかく祟りから開放されたのに、話しかけても拒絶されたりするかもしれない。それが怖いんだな。
どうして気づいてやれなかったんだ。
笑顔の下で多軌が悩んでいたのに。
「夏目くん?!」
体が勝手に動いた。泣いている、そう思ったから。泣き止んで欲しくて抱きしめた。
「タキならすぐ友達ができるよ。大丈夫。でもそれまでは」
―いつでも俺のところにきて―
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後日
彼女は1人じゃなくなった。それがすこし寂しかった。
今までなら彼女の隣には俺がいたのに。
「あ!」
それでも
「夏目く〜ん。」
笑ってくれるなら、
「一緒に帰らない?」
それでいいと思う。
「ああ。一緒に帰ろうタキ。」
君には笑顔でいて欲しいから。
--------end
あとがき
『ハジマリ』のあとがき
うん。はまって思わず書いちゃった。
なんか漫画読みつつ、思ったことを書いてみた。
いくら祟りが消えても一年近く話してなかったら、すぐには人と話せるとは思えない。つっかえるとかじゃなくね。(それもあるだろうが)そんな今まで喋らなかった子がいきなりおしゃべりになるって不思議やン。周りからみたら。それに「何?今更。」っておもわれたら怖いやん。俺はこわい。入学式から喋ってないんにな。
透の年齢がいくつかわからなかったから、高校一年にしちゃったけど、ま、いいか。
口調がおかしかったらすみません。
ここまでよんでいただきありがとうございます。