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□贅沢だわ
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『一人で飲む珈琲は贅沢だわ』
テレビの中の女優が言った。
うん、まぁそうだよね。一人の世界ってのは大事だ。
でも、さ。
ガタ
重い音を響かせてマグカップが置かれる。それから離れていく白く細い指を見つめ、指から腕と視線を上げていく。そして眉を顰めてこちらを見やる視線とかち合った。
「・・・」
何も言わずそらされた視線の先はなんの変哲もない写真。ただの写真のはずなのに彼女にとってはすぐ傍にいる俺よりも存在が強い。写真に写っているのは俺の愛する“人間”。彼女の愛する“弟”。
俺も彼を愛しているさ。だって俺は“人間”を愛しているんだから。そう愛しているよ、“人間”だからね。
そう。
そのはずなんだ。
それなのになんで憎らしい、羨ましいと思ってしまうんだろうねぇ。
………。
彼があんなにも彼女に愛されているから、か。
彼女が入れてくれた珈琲を一人すする。隣に座った彼女も同じように飲んでいるはずなのに。俺は一人。
独りなんだ。
(俺を見て欲しいと思うのは贅沢なのか)
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10,06,13
10.06.19改訂