ss<nztume,yakusizi>

□青春謳歌」(元拍手お礼(夏→←タキ
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妖しについての相談するため多軌と二人で帰路についていた。多軌が泥に足をとられこけそうになる。とっさに体を支えた。

「ありがと夏目くん。」

ちょっと油断してたわ。笑った多軌の鞄にあるものをみつけた。

「それ誰に渡すんだ?」

見えたのは簡単にだが可愛らしく包装された包み、たぶんチョコだろう。学校は終わっているから、渡せなかったか、それともこれから渡すのか。だとしたら誰に?

「ああコレ?・・・・」

「・・・タキ?」

「はい あげる。本命じゃなくて義理だけど」

え?

「いや嬉しいよ。ありがとうタキ。」

「そんなこと言って、本命チョコたくさんもらってじゃない。」

「あ、いやそれは」

「じゃあまたね。」

多軌は歩いていった。もう別れ道まできてたのか。
多軌が夕日いろに染まっている。眩しいな。

もらった包みを手に持ったまま俺も歩き始めた。


 ̄ ̄ ̄ ̄◇◆

塔子さんの質問攻めから逃れ部屋に入るとニャンコ先生がちょこんと座って待っていた。

「早くくれ夏目!」

チョコを

「先生これは俺がもらったやつだから少しづつ残しておけよ。」

「ふん貴様が食べきれないで腐らせるのはもったいないというから私が食べてやるんじゃないか。」

「うっ。確かにそうだけど。せっかく好意でくれたものを人に全部たべさせるのはちょっと。相手に失礼だろ。」

「・・・少しだけだからな。じゃあまずはそれを貰うぞー!」

にょほほほと不気味に笑いながら俺の手が持っているチョコめがけて飛んできた。

ガツンッ

「あ」

チョコを持っていた反対の手で思わずげんこつをくらわせていた。

「痛いではないか!」

「ごめん先生。でもこのチョコだけは駄目だ。」

鞄から今日もらったお菓子を取り出す。貰えたことに驚いたが別にたくさんもらったわけじゃない。いくつかの包みをニャンコ先生の前に置いた。

「ふーんそうか。」

「な、なんだよ先生。」

「べっつにー」

「うわっなんかむかつくなその言い方。」

「じゃあこっちのチョコは貰うぞー。」

「ちゃんと残しておけよ。」

お菓子を食い散らかしながら先生はぼそりと何かを言った。

「ちゃんと人並みに青春しているんだな。」


ニャンコ先生の頭をガツンと殴る。多軌からもらった包みを見ながらふと思った。
多軌は俺以外の誰かにもチョコをあげたのだろうか。



 ̄ ̄ ̄ ̄◇◆ 


一ヶ月後

また多軌と二人で帰っていた。
俺は学校では渡せなかったから、と自分の鞄の中から小さな包みを取り出した。

「タキ。はい、これ。」

「?」

「この間のお返し。」

「いいの?!ただの義理チョコだったのに」

俺が渡した包みを嬉しそうに見る多軌。


「ああ。例え義理チョコでもタキからのチョコは本当に嬉しかったから。」

「・・・開けてもいい?」

「いいよ。」

俺が不器用なりにも頑張って包装した包みをするすると開けていく。

「・・・・。」

「だめだったか?今まで女の子に物をあげたことなんてなかったからなにがいいかわからなくて。」

必死になって弁解する。好みのものもあげられず、言い訳までしてなんかさらにカッコ悪い。

「か、」

「タキ?」

「かっわいい〜!!」

中に入っていたのは

「ありがとう夏目くん!すっごく嬉しいわ!」

ニャンコ先生の形をした匂い袋。ヒノエに頼んで作ってもらった。

「良かった。」

力が抜けてへたりこむ。見上げると多軌の笑った顔があった。

「タキ、その中も開けてみて。」

「中?わぁっ。綺麗。」

袋の中から出てきたのは深い碧色の石。

「それはね。お守りがわりになるんだ。タキが危ないめにあったときにきっと助けてくれる。」

「夏目くんは?」

そんな不安そうな顔をしないで

「勿論俺も多軌を守るよ。」

「え、なつ、あの」

顔を赤くしてわたわたと慌てる多軌。顔があかいのは夕日のせいだけじゃないといい。

「あのね、私が言ったのは夏目くんが持たなくてもいいの?ってことだったんだけど。」

「え?」

「あははっ。顔が真っ赤だよ夏目くん。」

「〜っお互い様だよ。」

「え。あははそうだったっけ。」

恥ずかしい。今の勘違いはさすがに恥ずかしい。
静かな場所に風が吹いた。


「何をやっているんだ」

がさがさと草むらからニャンコ先生が出てきた。なんでこのタイミングで。

「む、その包みは。そうかー夏目。」

「言いたいことがあるなら後で聞くよ。」

「にゃ、ニャンコ先生!?」

いきなり多軌がニャンコ先生に抱きつく。

「やっぱりもふもふで可愛いー!!」

「や、やめんか小娘!」

一気に賑やかになったなぁ、頭の片隅で考えていた。あ、もがいていたニャンコ先生が止まった。

「お前に渡すものがあってきたんだった。」

「私に?」

「この間ばれんたいんの時にお菓子をくれたからな。お返しだ。」

「え?!」

今なんて、バレンタインにお菓子をあげた?

「本当?ありがとう!」

「ほい。」

「なんだ紙?汚い字だな先生。」

「うるさいぞ夏目。これはいつでも私を抱っこしてもいいという券だ。10枚綴りでお得だぞ。」

「いらな」

「いつでもいいの?!」

「常識の範囲ないでな。」

「ありがとうニャンコ先生。大切に使うわね。」

さっきよりも喜んでいる気がする。なんだか少し

「夏目くん?これ、大切にするね。」

ちりん
匂い袋につけられた小さな鈴がなった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄◇◆

二人と一匹であるく。ニャンコ先生はまだ多軌の腕の中だったが。


「なぁタキ。ニャンコ先生になにをあげたんだ?」

「お菓子の詰め合わせセット。ほらお菓子コーナーに置いてあるじゃない。あれよ。」

「そうなんだ。」

「うん。手作りをあげたのは夏目くんだけ。あ」

「そう、なんだ。」

「う、うん。」


カラスが鳴きながら飛んでいった。


「夕日が綺麗だなー。青春だなー」

「うるさいニャンコ先生。」



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄end

元拍手お礼文

夏目にある一言をタキに言わせたいがために書いた。

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