Novel

□君の好きなもの
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「はー、腹減った。」

ゲームのコントローラを投げ出すと、キバはごろりと寝転がった。

「そーだってばねー。」

コタツに入って赤丸と遊んでいたナルトものんびりと同意する。

「……おでんが食いてぇ。」

「へ?」

「おでんが食いてぇ〜!」

「えー!今日はシチューだってばよ。」

「なぁ、おでんにしようぜ。」

威勢よく起き上がるとキバはナルトに向き直った。

「ダメー!」

「いいだろ。お・で・ん、お・で・ん!」

キバは机をトントコ叩きながらおでんコールを始めた。

「だめだってばよ。もうシチューの材料買っちゃったもん。」

「明日にすればいいだろ?」

「おでんの材料ないってば。」

「買いに行けばいいじゃん。」

「外、雪降ってきたってばよ。」

雪も積もれば外に飛び出して行くナルトだが、それにはまだ時間がかかりそうだ。

「ナルトが作ったおでんが喰いてぇなー。」

今度はコタツを回り込んで、ナルトの背後からゴロゴロとすりよっておねだり開始。

「むー…」

「な、いいだろ……?」

「……もー、しょうがないってばね!お前のゴシュジンサマってば超わがまま!」

「アゥ?」

じゃれていた赤丸を目線の位置まで抱き上げて、思いっきりしかめっ面をしてみせたナルトに、赤丸は不思議そうに首を傾げた。

「いいのかっ?!」

渋々ながら同意したナルトに、見えない尻尾を振って、キバは青目を覗き込んだ。

「明日はシチューだってばよ。」

「やったー!じゃ、買い物行こうぜ!」

釘を刺すナルトの言葉などまったく耳に入らないキバは、素早く立ち上がり、ナルトの寝室に飛び込んでいってしまった。

「はー、キバって甘えんぼさんだってば……」

「ワウゥ……」

取り残された一人と一匹は、小さくため息をついてみるのだった。





あっという間にキバはナルトの上着やらを持って戻ってきた。自分はもうすっかりコートを着込んでいる。

「外寒ぃからな、あったかくしてけよ。」

言いながらキバはしっかりナルトの首にマフラーを巻いてやる。

「キバ、手袋片っぽしかないってばよ。」

「あぁ、いいんだよ。」

キバは左だけナルトに手袋をはめさせると、残った右手を当然のように繋いで自分のポケットへと入れてしまう。

「この方があったけぇだろ?」

「……キバ///」

「うわー、結構雪降ってるな。夜には積もるぞ。」

頬を赤く染めるナルトにも気付かず、キバがドアを押し開けると、勢いよく赤丸が飛び出していく。

二人は鍵を掛け、歩き出した。

「寒くねえか?」

「うん。」

(キバの手、あったかいってば……)

ナルトは繋いだ手に少し力を入れてみた。

それに気付いたキバが、軽く握り返してくれるのに、ナルトはほんわりと胸が暖かくなった。

(キバも甘えんぼさんだけど、オレも甘やかされてるってばよ。)

知らず笑みが漏れる。

「へへ。」

「どうした?」

「ううん、何でもないってば!早く買い物行って、おでん作ろっ!」

「おう!」

ふわりふわりと雪が舞う中、二人はポケットの中の手をぎゅっと繋いで走り出した。






甘えて甘やかして、心までも甘やかにとろけそうな、日常のひとコマのお話。




-fin-

20050412

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