story

□Sweet*New Year*
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「あけまして、」
「おめでとうございま〜す」


華やかな姉妹の声が新堂家の玄関に響いた。

パタパタと軽い足音を立て、奥から着物に割烹着姿の育ての母が出迎え、にっこり笑う。

「はいおめでとう」

姉妹が揃って新堂家を訪れるのは久しぶりのことだ。

「祥子ママ、何か手伝う〜?」
「じゃあお雑煮のお餅出してくれる、花野ちゃん」
「はぁい」

座敷にコートを置いて、花野が台所へ向かう。実咲はそのまま火鉢で酒を沸かしていた小父の隣に座った。

「おじさんもう呑んでんの? お父さん達、何で待ってないんだって怒るよ」
「遅いやつらが悪い。実咲も呑むか」
「あ〜と〜で。昨夜セールの用意してて遅かったから晩御飯食いっぱぐれて、腹ペコなのよ、先にご飯食べる〜」

久しく途切れていた娘たちとの正月に新堂の父母は上機嫌だった。

「みーちゃん、箸付ける前に玲と伊織起こしてきてちょうだいな」

お節のお重をテーブルに運んでいた祥子の指示に、反射的に腰を上げてから、実咲は首を捻る。

「ん、伊織帰ってんの?」
「深夜にね。お雑煮が煮詰まっちゃわないうちにお願い」

勝手知ったる第2の実家、実咲は階段を上がり、兄弟の部屋がある二階へ。
まずは弟の玲の部屋に急襲をかけた。

「あっきらー! エサの時間だよーっ…て何だ、起きてたの」
「……ノックぐらいしろよ実咲姉…」

ツマンナイ、と唇を尖らせた実咲に、セーターを頭から被っていた着替え中の玲がぼやく。

そして首を伸ばし姉の背後を見やり、まず口にしたのは、当然。

「花野は?」
「台所。じゃなくて、他に言うことあるでしょ」

幼なじみの恋人の元へすぐさま飛んでいこうとしたが、襟首を掴まれ停止を余儀なくされ、しぶしぶ玲は頭を下げた。
逆らったらどうなるかなど、生まれたときからこの歳になるまでの間に思い知っている。

「……あけましておめでとうゴザイマス」
「うむ。オメデトさん」

何でいちいち偉そうなんだ、そう呟いても実咲は聞いていない。用は済んだとばかりに玲を解放し、奥の伊織の部屋へ向かった。

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