story

□Sweet*Sweet〜Side AKIRA〜
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「――わたし、玲くんが好き。
 玲くんは、花野のこと、どう思ってる?」

ふたりで帰る、いつもの道。

家まであと少し、という距離になったとき。

下駄箱で会ったときから様子のおかしかった花野が、思い詰めた様子でいきなり口を開いた。


意味がわからなくてポカンとする。

なにをいきなり?
いまさら?

花野が俺を好きだなんてこと、言われなくてもわかってる。

逆に、言わなくてもわかっていると思っていた。


そこまで考えて、気付いた。

花野の言った、『 好き 』の意味に。


それは、家族とか幼なじみとか広い意味の『 好き 』じゃなくて、

オトコとオンナの『 好き 』だってことに。


花野はすがり付くようなまなざしで、俺の答えをずっと待っている。

泣く、一歩手前の表情だ。


なんで?
なんで、いきなりそんなことを言う――?


正直、そのときの俺には恋愛感情ってものがわからなかった。


花野は特別だ。

大事な家族、幼なじみ、一番近くにいる女の子。

生まれたときから一緒で、双子みたいに育って、誰よりもお互いのことをわかっている相手。


でも、いまの花野の考えていることが読めない。


黙って、眉をひそめると、花野がうつ向く。

あ、ほっとくと泣く。
焦って口を開いた。

よく、考えもせずに。

「わかんねぇ、花野は好きだけど、でも…」

花野が欲しいのはどういう言葉?
戸惑ううちに、花野が淡く微笑む。

見たことのない、大人びた表情に俺の思考が止まった。


「うん、わかった…。ばいばい玲くん――」

「え? 花野、」


わかったって何が?
ばいばいってなんだ?


呼び止める声も届かぬ風に、花野が背中を向けて走り去る。


今までにない拒絶を感じて、追おうとした足が凍りつく。


花野?



――馬鹿でガキな俺が、取り返しのつかない間違いを起こしたことを理解するのは、しばらくたってからのこと。



いつも側にいた、

大事な少女が、


俺の隣から去ってしまってからのこと―――。




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