story
□恋は水玉模様
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●side she●
アンタなんか好きになるんじゃなかった。
「待てよ、話聞けって…!」
振り切って引き離したはずなのに、気が付いたら追い付かれて腕を掴まれてた。
「もういい。ウンザリなの!」
感情的になってるって分かってる。
私らしくない、こんな衆目のある道端で言い争うなんて。
こういうふうになる私も、私をそうしてしまうアンタも大キライ。
変化なく整ったものが好き。
そんな私は、まあるく、歪みない場所にいたのに、アンタを好きになってから、目まぐるしく揺らぐ世界に放り込まれてしまった。
今の私の気分は激しく大きさを変える天然色のドット。
鼓動にあわせてチカチカする。
「…だから! 急にみんな都合が悪くなって、たまたま二人だけになっただけなんだから、お前が誤解するようなことじゃ、」
「嘘つき! 自分だって“みんな都合が悪くなる”なんてことあるわけないって分かってるくせに!」
休日の今日。
ホントなら、私とデートの日だった。
朝、急に掛かってきた電話でそれがキャンセルされるまで。
“ごめん! 部内で引っ越しする奴がいて、そいつの餞別みんなで買いに行くことになったんだ”
“…いいよ、しょうがないよ、じゃあまたね”
いつも部活優先。
チームの要だし、仕方ないって、我慢してた。
今日が2ヶ月ぶりのデートだったとしても。
だけど。
アンタのことが好きなマネージャー、どうしてあの子と二人だけで街にいるの。
私は独りぼっちなのに、どうしてアンタとあの子が笑ってるの。
衝動のまま、投げつけた。
誕生日、アンタに貰ったまあるいムーンストーンがついた指輪。
もういやだ、もういらない。
アンタが好きだと言ってくれた時のほっこりした暖かい気持ちも、
好きになりすぎて歪む私の気持ちも、
いらない。
「もういいよ、どうせアンタの友だち私のこと嫌ってるんだから、みんなと仲良く出来るあの子とくっつきなよ!」
掴まれた腕を振り払って、叫ぶ。
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