story
□Sweet*Sweet
3ページ/29ページ
<1>
「10時20分!? うそやだ寝過ごしたぁあ!!」
枕元に置いていた携帯の時間表示を見るなり叫んで、花野は飛び起きた。
今日は昼に駅前で友人達と待ち合わせなのだ。約束の時間まであと一時間を切っている。
ドタバタと洗面所に向かい顔を洗って寝癖を整え、姉が常備しているグレープフルーツジュースをコップ一杯拝借する。
何を着ていこうか考える余裕もなく、コーディネートいらずのキャミソールドレスをクローゼットから取り出した。
パジャマのボタンを外す手間も惜しんで頭から脱ぐ。
と。
「ぅわッ?!」
ひっくり返った叫び声が窓の方から響き、花野は驚いてそちらに顔を向けた。
窓越しに、顔を真っ赤にした玲と目が会う。
「……っごめんっ!!」
回れ右して慌ててどこかへいく玲。
ぽかんとしてそれを見ていた花野は首を傾げる。
(あれ……向かいの部屋は伊織兄の部屋じゃなかったっけ……どうして玲くんが……ごめんて…?)
ハッ。
――花野は、寝るときにはブラを着けない派だ。
姉には、デカイんだから夜ブラしないと垂れるわよ、と常日頃から言われているが(そういう姉もFカップだ)、窮屈でどうしてもイヤなのだ。
パジャマをガバリと脱ぐと、ようするに、つまり――裸なワケで。
「!!!―――、!? ッ!!!」
声にならない悲鳴を上げて、花野は身体を隠すようにしゃがみこんだ。
――今さら遅いのです。