story
□Sweet*Sweet〜Side AKIRA〜
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玲と花野は、今時珍しいくらい仲の良い幼なじみだった。
親友同士だったお互いの親が隣り合う土地を買い、すぐ行き来できるよう家を建てたのは二人がまだ生まれるまえのこと。
兄が言うには、お前たちは生まれる以前から傍にいた、とそういうことになる。
花野の両親は共働きで、そのため井澤家の姉妹と、玲たち兄弟はまとめて新堂母に育てられた。
生まれたときから一緒だった。
玲にとって花野は、側にいるのが当たり前の存在で、離れることなど考えもしていなかった。
小学校最後の夏休み、花野から意外な言葉を聞くまで――そして、子どもだった自分が、間違った言葉を彼女に返すまで。
彼女が、自分の傍から居なくなるなど、思いもよらないことだったのだ―――。
あの告白のあと、花野は徹底的に玲を避けた。
いつもなら二人で夏休みの課題をどちらかの部屋で片付けるのに、花野は一人で図書館へ行き、新堂の家にもやってこない。
声を掛けようとすれば怯えた素振りを見せる花野に、玲はそれ以上近付くことが出来なかった。
自分が花野を傷つけたから、花野は玲を避けるようになったのだと思ったのだ。
――それよりも、花野が自分を拒否することに、自分の方が耐えられなかった。
どうして普通の好きじゃダメなのか。
家族の好きじゃダメなのか。
何度も、眼差しで問い掛け、目を逸らされる。
花野が何故、あんな風に切羽詰まった態度で告白したのか。
何故挨拶すらしなくなったのか。
そのときの玲にはわからなかった。
――知らなかったのだ。