□ 頂き物
□誕生日、おめでとう
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「妄泉郷」ののきサンより誕生日プレで頂いたSSでっすv
ご本人が気にされてたんで、一応注意書きです。
全然気にする事ないと思うんですけども。
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誕生日、おめでとう。
※原作無視の未来捏造話です。
最初からでかい爆弾仕掛けているのでお気をつけください。
彼らの卒業後の進路に具体的なイメージを持っている方や
原作絶対主義の方はご覧になられないほうが無難かと思われます。
浜田から遅れること3年、俺も野球をやめた。
別にどこか故障したわけではないし、野球が嫌いになったわけでももちろんない。
田島ほど自分の将来に自信は無く、榛名ほど強い気持ちを持っていなかった、ただそれだけ。
小さい頃から日常と共にあった野球がなくなるってどういうことだろうと不安になったこともあったけど、あれからもう一年。いざ辞めてみたら意外とどうってことなかった。 そんな自分に少し寂しさを感じる。
自分が「野球をやりたくて」始めたわけではなかったことを、ふと思い出す。
浜田がやっていた野球、浜田が辞めた野球。
憧れて、追って、追いつく前に逃げられて。
でもあの背中が忘れられなくて、コッソリと淡い期待を抱えて。
つまりあの頃の俺にとって野球は、もちろん好きなスポーツでもあったんだけど、浜田と自分を繋ぐひとつのツールのような気がしていたんだ、多分。
じゃあ今は?
考え事をしながら春の気配が漂う土手を歩いていると、聞き慣れた金属音がした。
河原沿いのグラウンドで少年野球の試合が行われているようだ。
思わず足を止めてボールの行方を追う。フワフワと頼りなさそうに飛んだボールは、風に乗って狭いグラウンドを渡り、センターの頭を越えたところでバウンドした。
「風が強けりゃホームランだったな」
突然の背後からの声に、振り向きもせず俺は返した。
「俺ならさせねーけどな」
フェンスの無いグラウンド。どこまでだって追いかけていける。
「ちびっ子野球にムキになるなよ」
聞きなれたその声は少し笑っているようだった。
「ムキになってやってただろ、自分だって」
見下ろす景色に遠い昔の自分達が重なった。
会話のキャッチボールが途切れ、なんとなく振り返ってみると、相変わらずの見慣れた金髪の下から遠くを見るように目を細めて微笑んでいる浜田の顔が目に入る。
―――キモイぞ
いつもの調子で出て来そうになった言葉を飲み込んだ。
今、浜田が見ているだろう自分と同じ景色を消したくなくて。
ふと浜田の視線が自分に移り、その目にイタズラ好きな大型犬の光が浮かんだ気がした。
「っおい、ちょ…!」
俺はラリアットをくらって浜田共々芝生の上に倒れこんだ。
尻の痛みに耐えている俺の横で、浜田は「イテー」と笑いながら大の字になって寝転び、よく晴れた青空に再び目を細めている。
「痛ぇな、ちくしょう」
まだ枯れ草色の広がる芝の上に手をついて上体を起こすと、自分の周りに数冊の冊子がバラバラと広がっていた。どうやら転がった拍子にバッグの中身をぶちまけてしまったらしい。
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