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□銀色ロケット
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銀色ロケット
「 38.4度 」
泉の体温で温かくなった体温計のメモリを浜田が読み上げた。
赤い顔をし、まだベッドの中にいる泉から「そいや、それ壊れてたぜ。」なんて言葉が出てきたが、浜田に「あのなー・・・。」の一言で済まされてしまった。
なんだかいつもと逆だ。
くそっ。浜田のくせに。
「とにかく今日の部活は休みだな。花井に電話・・」
「嫌だね。」
浜田の言葉を自分の主張でさえぎる。
「おばさんに迎えに来て・・・」
「嫌だね。」
再び浜田の言葉を自分の主張でさえぎり、さらに「だいたい、おめ−のせいだからな。」と脅しも上乗せした。
「うっ!」
週末の昨夜はいつものように泉が浜田の家に泊まりに来ていた。
グラウンドの都合で部活が昼からというので、ついつい気が緩んで・・・・。
風呂でエッチして、その濡れた体のまま洗面所でエッチして、フラフラになった泉を更にベッドへ運び、朝まで寝かせなかった。
風呂から上がって、身体を拭こうとした泉をそのまま洗面所でバックで襲ったのは自分。
髪も乾かないまま寒い部屋へ連れていったのも自分。
寝る間も与えなかったのも自分。
泉が熱を出したのは、外から見れば泉の自己管理ができてないということになるが、一番の原因は浜田であった。
起きる前にもう一回vなんて思い、触った泉の身体がやけに熱くなっていて発熱に気がついた。
そんな風に脅されてもそれは泉には言えないって事はわかってるが、浜田の家で預かって熱を出したとあれば、泉が泊まりにこれる回数も減るかもしれない。
「病院行かなきゃだろ?」
「これぐらい平気だろ。」
「花井に部活休むって連絡しろよ。」
「・・・・。」
このやりとりも何回目だろうか。
どうやら泉は部活に行く気でいる。
フラフラしながら上半身を起こそうとする泉のおでこを小突くと、フラフラと後ろへと倒れ枕へボフッと頭を埋める。
これも何回しただろうか。
「ほれ見ろ。うちにいてもいいから、とにかく部活は休め。どうせ集中できねーし、周りも迷惑だろ? で、完全に治ってからいけよ。」
「・・・・。」
泉は“周りに迷惑”という言葉でしぶしぶ納得したらしく、もそもそと布団の中へと入っていった。
泉はチームメイトや友人には、こんな屁理屈ばかりいって困らせるような事はしない。
が、浜田だけにはたまに我がままになったりする。
それが浜田には嬉しかった。
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