□ きり番

□桜宵 (感謝の5万)
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それは不思議な光景


その少年が桜の樹の下に立つと

桜が舞った

まるで

喜んでいるかのように

包み込むかのように

抱きしめるかのように

やさしく やさしく 花びらが舞う


それは不思議な光景





桜宵







よく晴れた日曜の午後、泉家は近所の公園にお花見に来ていた。
新興住宅地にあるこの公園は広々としており、野球場も隣に隣接している。
野球場と公園の間に桜の木が連なり、その中の1本の木の下での昼食をとっていた。

「まぁー!きれいねぇ!!」

ここ数日で一気に開花した桜はまだ6分咲きだったが、その桜並木を見る人々は皆声をそろえてそう言った。

「あー、気持いいーぜ。」

「考、寝るなよー。」

「んー・・・・。」

お腹も膨らんで、春のぽかぽか陽気に誘われて思わず横に寝転んだ泉家の次男はあっという間に眠りについてしまった。




泉が目をあけると、空には満開の桜。
その花の隙間から見える月。
そして・・・・月明かりに照らされた月色の髪。

「よお。」

「・・・・!!」

はっと我にかえり慌てて身を起こすと、そこには金髪の男が自分を覗き込んでいた。

「?????」

いつの間に夜になったんだ?
周りは真っ暗で、まるで自らが発光しているかのようにその桜だけが異様に浮いていた。

つーか・・・ここどこだよ!!

あたりを見渡すと寝ていた筈の公園ではなく、建物も何もない。
ただ桜だけがあった。

「あんた・・誰?」

そこにいる金髪で着物を着た男に警戒心たっぷりの声と目で泉は聞いた。

「おれは浜田。」

「ここどこ?」

「夢の中。」

「は?」

この金髪は馬鹿にしてんのか?
むっとした顔をした時に、浜田と名乗った男は何か聞こえたのか後ろを振り向いた。

「おっと、時間切れ。」

そう言うと泉の方を再び向き、「こんな所で寝てたら桜にさらわれるぞー。」という言葉と同時に花びらの竜巻が泉の周りを取り囲んだ。

「うわっ!!」

花びらの壁の隙間から、その金髪がひらひらと手を振るのが見えた。







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