その他

□おやすみ
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「怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、…」



怖い夢を見た。


まるで現実のような、

悪夢なのに、本当にあったことのように感じる。




目からは涙。

顔は青ざめて。


眠りにつこうと思えば思うほど、
先程の夢が頭から離れない。




「誰か、……誰でもいいから、


助けて…!!」




小声で、何もない部屋に向かって必死に助けを呼ぶ。




――もちろん、誰も助けてなんてくれない。

助けてくれる人なんて、私にはいないから。――



分かってたのに。



「どーしたの、可愛い顔が台無しだよ?」




ふと声が聞こえた気がして。




「おい!!またナンパ癖出してんじゃねえよカメ公!!」

別の声が聞こえる。



「姫さんが泣いとるなんて、何があったんや?」



また別の声。



「助けてほしいの?
いいよっ?

答えは聞いてないけどねっ!」



また別の声。



「だ、誰……?」



確かに『助けて』って言ったけど、
誰もいないはずの部屋で声が聞こえたら流石に怖い。…というか、驚いた。



「大丈夫、僕のお姫さまを助けに来ただけだから。」
最初の声が言う。


「お姫さまなんてここには…」


いないですよ、と言おうとしたのだけど。


「いるじゃねえかよ。

お前だぜ?お姫さんはよぉ。」

偉そうな2番目の声。



「姫さん守るんがわいらの役目、っちゅー事なんやけどな!」

関西なまりの3番目の声。


「お姫さま、確保完了ー。」

のんきな4番目の声。



「……はい?」


気の抜けたような私の声。




「怖いなら、一緒に寝てあげるよ?」

「あ、こらカメ!!
変なことすんじゃねーぞ!?」

「姫さん、安心して眠ってええでー。」

「ねえねえ、お姫さまの隣は僕の場所だからねっ!?」



なんだか騒がしくて、
いつの間にか私の周りが暖かくなった気がした。



「おやすみ、お姫さま。」

頭を撫でられるような感覚。


「悪い夢なんて、俺が食ってやるからよ!!」


明るい声。


「明日起きたら、一緒にお絵かきしよーねっ!!」


抱きつかれたような温もり。


「姫さん…わい……寝るでーー…」


寝息。




なんだか、夢を見てるような気がする。


…というか、夢だろうけど。



でももう怖くないから、眠れる気がする。





***






結局私は、夢のような温もりに包まれたままゆっくり眠りに落ちていった。





おやすみ
(うむー…)
(あ、起きた。)
(あり?
夢じゃなかったの…?)




END




→あとがき。




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