ハレルヤ
□第13話
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「っ晋介!!!」
ザクリ、という、聞き慣れた音が嫌にはっきりと耳につく。
それと同時に鮮やかな赤が舞い散り、視界を横切る。
そちらへ行こうと足を動かすも、降り出した雨のためぬかるんだ土に足をとられてうまく進めない。
なぜか、こんな時に限って時間が進むのはゆっくりだった。
「っ…大、丈夫だ…お前は自分のことだけ考えとけ!」
そう言って笑うあいつは、だけど苦しげで。
その左目を覆う手の隙間から、真っ赤な涙がこぼれ落ちる。
それは雨と共に頬や腕を伝い落ちて、やがて先を争うかのように地面へと吸い込まれていった。
こういう時だけ冴え渡った直感が、ガンガンと警報を鳴らす。
速く、速く彼のもとへ行けと。
その指令に従い必死で走るのに、だけどそれを嘲笑うように、時間は過ぎていく。
「あばよ、綱吉」
「っ晋介ぇえええぇえっ!」
――伸ばした右手は、ただ、空を切った。
やがてその場には、雨音だけが響き渡った。
黒き獣
-下-
(それはまるで)(空が泣いているかのようで)