素数的進化論。

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第25話
-路地裏の乱闘-










「………上原、くん?」



様々な嫌がらせを受けた1日が終わり、綱吉が帰ろうと校門に差し掛かった時のことである。

ふと、唐突に沸き上がる、嫌な予感。

綱吉は一瞬の躊躇のあと、超直感が示すままに走り出した。











所変わって、こちらは下校途中の上原。

しかし彼はいつもとは道を変え、わざと人気のない路地へと入り。



「…いい加減、鬱陶しい」



はあ、とため息をついたあと、いつもより低い声でそう言いながら、眼鏡を外しカバンへとしまう。

そして後ろを振り返れば、いつの間にかそこには十人ほどの柄の悪い男達が道を塞ぐように立っていた。

彼らは皆目付きが鋭く、とても堅気の人間には見えない。

そう、それはまるでヤのつくあの職業の人間のような――



「龍禅和哉だな?」



「…人違いだ」



男達の真ん中に立った男が、問いかけというより確認をするように問いかけた。

しかしそれに、上原はヒョイと肩をすくめ。



「嘘つくんじゃねえ!調べはついてんだよ!!」



「やめねえか!」



上原の態度に、後ろにいた若い男がカッとして怒鳴るも、それをしかりつける真ん中の男。

どうやら彼がこの中で一番偉いらしい。



「俺の名字は上原だ」



そんな彼らのやりとりにため息をついて訂正する上原。



「…しかし、龍禅のとこのお孫さんだということは本当でしょう」



「…それが?」



「…っ…」



リーダーの男への上原の態度に、またしても同じ若い男が口を開きかけるも、それを視線で黙らせるリーダー。

そして上原へと一歩近づいて。



「坊っちゃんには、俺たちについてきて欲しい。…こちらも手荒なことはしたくない」



「人質に、傷をつけたくないから?」



「そうだ。…大人しくついてきてくれれば、我々は危害を加えない」



それはつまり、裏を返せば――大人しくついて来なければ、危害を加えるということである。



「こんな大人数で来ておいて…俺がどう答えるかくらい、わかってるはずでしょう?」



そう言って、挑戦的な笑みを浮かべた上原に、男は「残念だ」とため息をつき。



「…遊んでやれ」



そしてその場に、男達の野太い声が響いた。









「…っは、はあ…はあ…」



数分後。

傷だらけになり、肩で息をする上原には、もう時間の感覚がない。

五分たったか、十分たったか。


やはり暴力の専門家だけあって、男達は強く、その上多勢に無勢。

家の事情でそこらの不良ごときならば何人かかって来ようと余裕だが、しかしやはり本業を相手にするとなるとキツいものがある。



「流石、鬼の大造のお孫さんだ。うちの若いのじゃあ歯がたたない」



「お褒めの言葉どーも」



一人、傍観していたリーダーの男に、上原は明らかに強がりと分かる様子で言葉を返した。



「しかし――若い」



その言葉には、思わず無言になる上原。

なぜなら上原とて相手を何人か仕留めてはいるものの、しかし相手はまだ残っているし、何よりこのリーダーの男は未だ手を出していない。


正直に言って、良い状況ではないのだ。



「さて…遊びはここらでやめましょうや、龍禅のお孫さん。私らも暇じゃあない。そろそろ、ついてきてもらいますぜ」



そう言って、一歩、近づいてきた男に、上原が構えた――その時。



「――見つけた」



聞きなれた声が、男達の後ろから聞こえてきた。





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