素数的進化論。
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第1話
-苦労少年の1日-
『12位は……、ごめんなさあ〜い、てんびん座のあ、な。たっ(ウインク)
今日は何をしてもうまくいかない1日ぃ〜っ。全部が全部、サ・イ・ア・ク、はあと。
上司に何か言われても、黙って従ってくださいね?
特に久しぶりに合う知人には注意しましょー!
ラッキーカラーは赤!
それでは今日も、良い1日をお過ごしくださあ〜いっ!
また明日〜っ!』
――その日の少年は、ついてないことばかりだった。
朝、家の時計が壊れていたかと思えば、登校中にある信号という信号のすべてに引っ掛かる。
親切心でお婆さんの荷物を運んでやれば、自分のカバンが水溜まりに落ち、朝練中には後輩のノーコンサーブが頭に当たる。
その上自分の教室を間違って友人にあきれられ、教室に来れば今日提出の宿題を家に忘れたことに気付くといった始末。
「はあ…」
少年は思わず肘をついてため息をついた。
「今日の俺、激ダサ…」
そして窓の外を眺めたまま、いつもの口癖をポツリとこぼす。
「……」
そんな少年がふと思い出したのは、今朝見たばかりの星座占い。
その内容があまりにも不吉過ぎたことと、それを発表していたアナウンサーのテンションがあまりにもウザかったために強く印象に残っている。
「(確か…)」
『今日は何をしてもうまくいかない1日ぃ〜っ。全部が全部、サ・イ・アークッはあと!
上司に何か言われても、黙って従ってくださいね?
特に…』
「…ど、…し…ど、宍戸ッ!!」
「はいッ!?」
ぼうっと窓の外を見ていると、いきなり大音量で自分の名前が呼ばれ、思わずガタリと音をたてて立ち上がる少年。
その際あまりにも驚いて変な声を出してしまい、クスクスという笑いが周りに広まる。
「ったく、なにボーッとしてるんだ」
「スンマセン…」
どうやら何度か呼ばれていたらしく、担任の顔は飽きれ顔。
周りを見回せば、いつの間にやらHLは始まっていたらしく、クラスメイト達の視線を感じながらも席へと腰をおろす。
「全く…悪いな沢田。こいつは朝練もあって今はこんなんだが、意外と面倒見のいいイイヤツだ。宍戸、仲良くしてやれよ」
「こんなんってなん…………沢田?」
その言いようにため息をつきながら反論するも、ふと担任の言葉に聞き覚えのあるものを見つけて首を傾げる。
……はて。
今この教師はなんと言ったか。
「宍戸…お前今までなんも聞いてなかったのか?
転校生の沢田だ。お前の隣だから色々世話してやれ」
「転、校…生……?」
あきれたような顔をしつつも説明してくれた担任。
しかし未だ理解していない―のか少年の頭脳が無意識のうちに理解したくないのかは分からないが―少年。
――と、そんな少年の右肩を、ぽんぽん、と叩く誰かの手。
少年がそちらへと目をやれば……
「“初めまして”、宍戸くん。
俺、転校生の沢田綱吉って言うんだ」
そこには、にこりと笑った優しそうな少年の姿があった。
『今日は何をしてもうまくいかない1日ぃ〜っ。全部が全部、サ・イ・アークッはあと!
上司に何か言われても、黙って従ってくださいね?
特に久しぶりに合う知人には注意しましょー!』
「よろしく、ね?」
『それでは今日も、良い1日をお過ごしくださあ〜いっ!』
――少年の1日は、まだ、始まったばかり。
「へえ〜、沢田くんって並盛から来たんだ」
一時間の休み時間。
「部活とかやってたの?」
「はいはーいっ!
好きなタイプってどんな子なの?」
その日の朝転校生のやって来たその教室では、一人の少年を囲んで人だかりができていた。
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