素数的進化論。
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第0話
-プロローグ-
「依頼内容はよく分かりました」
どこかのとある一室。
そこに置いてある家具や装飾品、その全てが高級感溢れるものであり、また実際にそれら全ての値段は、一庶民など一生かかっても手にすることのできないほどであった。
そんな室内にいるのは、五人の人間。
ローテーブルを挟んで、向き合うようにソファーに座るのは二人。
その後ろにそれぞれ一人と二人、まるでボディーガードのように立つ人物がいることから、この二人がそれぞれの主なのだと分かる。
「それでは、受けていただけますか?」
先に声を発した、後ろに一人の部下を立たせた、若く―むしろ若すぎる―青年に対し、今声を発したのは大分の歳である。
青年――いや、少年だろうか。
そう表した方がしっくりくるようなその人物は、相手の言葉ににこりと笑って頷いた。
その返事に、パッと明るい顔をするもう一人の男――名を、跡部景助という。
日本ではかなりの財閥の社長である。
「あ…ありがとうございます!」
しかし先程からのこの部屋の様子からは、男ではなく、まるで少年の方が格上のような雰囲気があった。
それを証明するかのように、何度も何度も頭を下げる跡部。
その後ろに控えた二人の部下も、どこかホッとしたように見える。
「そんな…頭を上げてください」
その様子に、顔に困ったような苦笑を浮かべる少年――イタリアンマフィアボンゴレファミリー十代目ボス、沢田綱吉。
未だ十代という若い彼は、しかしどこかボスという落ち着いた雰囲気を、その身からしっかりとかもしだしていた。
「うちのファミリーも、跡部さんとは仲良くさせていただいていますし…」
そしてそれだけでなく、物腰柔らかゆえにどこか逆らえない、そして人を惹き付ける雰囲気さえも、しっかりと身に付けていた。
「本当に仲良くさせていただいていますから、…ね?」
その言葉に、彼の後ろに控えた黒ずくめの部下が、クスリ、と笑いをこぼした。
――そして、新しい舞台の幕が開いた。
To be continued...