企画

□恋の始まり
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「そういえばさ、」



日差しも暖かな、ある日の昼下がり。

奴良家へと遊びにやってきたイタリアンマフィアボンゴレファミリー十代目、そして愛すべき恋人や側近たちと共に優雅に過ごしていたその時間は、



「リクオっていつリョーマのこと好きになったの?」



にんまり笑って言いやがったボンゴレ十代目のその一言により、リクオにとって一気に楽しくない時間になることとなった。



「………………は?」



ぽかん、と思わず間抜け顔で固まり、湯飲みを傾けたまま問題発言をした張本人である綱吉を見つめるリクオ。

ちなみに彼の隣に座る雪女により、その中に入っていたお茶はこぼれる前に凍らされている。



「や、だからさ、いつ頃リョーマのどこら辺を好きになったのかなーって」



「しかもなんか増えてるし!」



パリン、と煎餅を音をたててかじりつつ、しかし楽しげな表情のままそう問うてくる綱吉。

奴良組三代目候補として、そしてリョーマの幼なじみとして綱吉と知り合って幾ばくか。

彼の性格は粗方掴めてはいるが、まさかこんな午後の一時に爆弾を落としてきやがるとは。

しかも綱吉と二人きりならいざ知らず、周りには雪女たち側近や――そして何より話題の人であるリョーマまでいるのだ。



「あ、それ俺も知りたい」



「な…っ」



しかもリョーマまでそんなことを言う始末。

興味津々、という目を向けてくるリョーマと綱吉に、勘弁してくれと泣き出したくなる。

そこでふと、夜の自分ならば上手く煙にまけるのかなあなんて考えるが、しかし直ぐ様そんな考えは霧散する。

夜のとはいえリクオはリクオ、楽しいことを見つけたボンゴレファミリー十代目ボスには勿論、リョーマに弱い彼に勝ち目などなく。



「で?どうなの」



ならばどうするかといえば、



「〜〜〜っ知らない!」



――脱兎の如く、逃げるしか道はなかった。















「………逃げちゃった」



「綱吉様がいじめるからですよ」



リクオが逃亡した後。

その後ろ姿を見つめつつ、やれやれと肩をすくめる綱吉に、雪女は苦笑混じりに意見する。



「…追いかけなくとも良いのですか?」



いくら数えるほどしか来たことのない奴良家とはいえ、超直感を持つ綱吉のこと。

探そうと思えば探せるだろうに、何故かと。

首を傾げる雪女に、しかし綱吉は笑って首を振る。



「今追いかけてもきっと何も教えてくれないでしょうから。それに…俺が行くよりも適任がいるでしょう?」



クスリ、笑いながら見た先にいるのは、綱吉の隣に腰かけるリョーマ。

なるほど確かに、超直感とはいえ勘に頼って探す綱吉より、この家のことにもそしてリクオのことにも詳しいリョーマが行った方が、早くそして確実にリクオを見つけられるだろう。

それに何より――リクオは、何だかんだ言ってもリョーマには弱いのだ。

自らそれを、認めるくらいに。



「ってことで、よろしくリョーマ」



「……はいはい」



そう言って仕方なさげを装ってはいるものの、しかし素直にその腰をあげるのは、やはりリョーマも先ほどの質問の答えが気になるのか。


やがてリョーマの姿も見えなくなり、その場にはパリポリと煎餅をかじる音と、茶をすする音しか聞こえなくなって。



「ああ、それに」



「…はい?」



突然、ふと思い出したかのように声をあげた綱吉。

それに雪女は、コトリと湯飲みを机に置いてそちらを向く。


そんな彼女に、綱吉はにこりと笑みを浮かべながら、



「リクオを追いかけなくても、雪女さんなら知っているかな、と、思いまして」



そう、言い放った。





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