企画
□Peaceful one day.
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「ね、あれ誰かな?」
「キャーッカッコイイ〜っ」
黄色い声の飛び交う中、悠々と廊下の真ん中を通る、赤、銀、茶の三人。
身につけた制服はこの学校のものではないにも関わらず、その足取りには迷いがない。
そして彼らは、ある教室の前で立ち止まった。
ある日の並盛中学校。
その教室の一室では、獄寺隼人が山本武を急かして怒鳴っていた。
「早くしろ野球バカ!こうしてる間にも十代目は病魔に悶え苦しんでらっしゃるんだ!早く右腕である俺がお側に行かなくては…!」
「まあ待てって獄寺。ツナは逃げねえんだから」
「ったりめーだこのアホ!そういう問題じゃねえんだよ!」
あはは、と笑いながら受け答える山本は、しかし怒鳴る獄寺を尻目にいたってマイペースに帰り仕度を進める。
もはやこの二人のやり取りは見馴れてしまったらしく、クラスの誰も驚きはしない。
普段ならここにもう一人、気が弱くお人好しなのになぜかたまに黒くなる少年が入るのだが…今日は朝から姿が見えなかった。
「ったくてめえも十代目のお見舞いに行くっつうから待っててやってんのに…!」
そう言ってイライラとしながらタバコを吹かす獄寺は、既に準備万端。
むしろ自他共に認める良い頭を持っている彼は、学校へと登校してきた時から既に準備万端である。
彼が尊敬し、自身が右腕だと言う人物の言葉がなければ、学校など休んで付きっきりで看病していただろう。
ちなみに、その人物の言葉が笑顔で一言、「学校行かなきゃ口きかない」だったことは余談である。
――と。
何かに気付いた山本の手が止まる。
そして廊下の方へと顔を向け、首を傾げた。
「なんか外、騒がしくねえか?」
「ああ!?んなことよりさっさと仕度しやがれ!」
しかし獄寺は意に介さず――その言葉を怒鳴った瞬間、教室のドアが開いた。
「ツーナヨーシくーん、」
「あーそびーましょーっ」
そして現れたのは、赤、銀、茶の三人。
ガラリと開けたドアの両側に、赤――丸井ブン太と、銀――仁王雅治が達、中を覗いてなんとも暢気な声をかけたのだった。
そしてその真ん中では、茶――柳生比呂士が、申し訳なさそうに苦笑を浮かべていた。
「ははっ仁王さんに丸井さん、柳生さんまで…久しぶりだなー」
突然の乱入者達に時間の止まっていた教室を動かしたのは、山本のそんな一言だった。
「お久しぶりです山本くん、獄寺くんも」
そしてその言葉に、にこやかに返したのは、柳生。
流石紳士という二つ名を持つ彼らしく、1つ年下の彼らにも敬語である。
「あれ?ツナいねーじゃん」
そして柳生の右隣、赤い髪をしたブン太は室内を見回してキョトンとした表情になった。
「ホントじゃのう…なあ忠犬、」
そして柳生の左隣に立つ仁王は、ブン太の言葉に頷いた後そう言って獄寺に視線をよこす。
十代目、十代目とうるさい彼は、仁王によくそう呼ばれていた。
「忠犬じゃねえ!!」
「綱吉はどうしたんじゃ?」
そしていつも通りその呼び方に噛みついた獄寺をさらりと無視し、視線を山本へと移す。
「ツナなら…」
「十代目は今日は風邪をひかれてお休みだ!」
答えようとした山本を遮り、怒鳴るように答えたのは獄寺。
彼のそんな反応が面白く、仁王はからかうのだが…しかしそれに獄寺が気付く気配はない。
「え、何あいつ、風邪引いたのかよぃ」
「それは心配ですね」
「そうじゃのう…せっかく遊びに来たのに」
「そっちですか」
仁王のなんとも彼らしい言葉に、柳生は呆れ混じりに突っ込んだ。
「あ。俺ら今からツナの見舞い行くンスけど…三人も一緒に行きます?」
そしてそんな彼らにへらりと笑って提案したのは、そのやり取りをにこにこしながら見守っていた山本で。
「お!いーじゃん行こうぜ」
「賛成じゃ」
その言葉にパッと顔を明るくする丸井達。
今日は午後からの授業がなかった立海組。
柳生はともかく、丸井と仁王の二人は暇を潰す絶好のイベントに一も二もなく乗っかった。
しかしそれに難色を示す人物もいるわけで…
「反対だっ!!お前らが行くと十代目がお疲れになる!」
「お前さんが行く方が疲れるじゃろ」
バンッ!と机を叩き、そのまま丸井と仁王を指差して怒鳴った獄寺に、仁王は間髪入れずに突っ込んだ。
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