姫はマのつく王子様!
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「リョーマ。リョーマ起きてください。もう起きる時間ですよ」
「ん…」
ある日突然、日本のシーワールドからこの眞魔国へとやってきた俺たち。
全てのミッションを終え、日本に帰れると思ったけれど―だけど一向に帰れないということが分かったあの日から、一週間がたち。
俺、越前リョーマは、イトコでありいつの間にか眞魔国の王様、魔王陛下になっていた渋谷有利の護衛であるウェラー卿コンラートに毎朝起こされるのが日課となっていた。
「あと五分…」
「寝かせてあげたいのは山々なのですが、朝のロードワークに行くんでしょう?それなら起きて準備しなくては」
「んん…」
コンラッドの言っていることは分かっていても、気持ちとしては布団から出たくない。
その気持ちを表すかのようにますます布団の中に潜り込めば、ギシリという音とともに微かに沈み込むベッド。
それにより、コンラッドがベッドの上に座ったことに気づく。
「まったく…アナタは毎朝」
聞こえてきた苦笑混じりの声は、思ったよりも近くからで。
「早く起きないと、……キスしちゃいますよ?」
「!」
やけに低い声で発せられた言葉に慌てて布団から顔を出せば、すぐそこにあるコンラッドの笑った顔。
「……………近いんだけど」
「そりゃあ、起きなければキスしようかと思ってましたから」
「………」
笑みを浮かべたまま答えたその言葉に、俺は黙って布団を鼻の下まで引き上げる。
朝っぱらから何言っちゃってるわけ?この変態。
俺の行動と視線から言いたいことを悟ったのか、コンラッドは「残念、」と言ってベッドから立ち上がって。
「二度寝なんてしないで着替えてちゃんと来てくださいよ?陛下と外で待ってますから」
そう言って、部屋を出て行った。
……めちゃくちゃ二度寝したいんだけど。
「お!来た来た!おーい、リョーマーっ!」
ぶんぶんと元気よく両手を振る有利に、俺は軽く手を上げることで応えながら欠伸をかみ殺す。
………あ。
今コンラッドが笑った。
「おはよ!リョーマ」
「ん、おはよ」
「どうやら二度寝はしなかったようですね」
「……お陰様で」
「それは良かった」
嫌みを込めて言ったけれど、コンラッドは相変わらずいつもの笑みを浮かべたままだった。
日本に帰れないことが分かったあの日から、早一週間。
有利はその後も何度か色々と試して―そしてそのたびに勿論俺も一緒にして―いたけれど、結局どれも効果はなくて。
初めは落ち込んでいた有利も、取りあえず持ち前のポジティブさを使って気持ちの整理を―完璧とは言わなくても―したらしい。
体力を落とさないように、そして筋力アップを目指して毎朝のロードワークを始めた。
とは言っても、眞魔国の中とは言えど魔王陛下か一人で外を出歩くことなどできるはずもなく。
有利がしたいのならと当然のように護衛のコンラッドがついてきて。
そして俺も、せっかくだからと有利に誘われるまま参加することになった。
ちなみに、あの自称有利の婚約者も勿論初めは参加することを―なんでも俺とコンラッドという参加メンバーが気にくわないらしい―主張したし、自称有利と俺の教育係であるギュンターも勿論。
でもまあ、結局ヴォルフラムは一日で、そしてギュンターに至っては始める前に俺と有利の二人がかりで説得をして、一日もたたずに不参加になっちゃった訳だけど。
まあとにかくそんなこんなで、俺と有利はここ、眞魔国での生活を作り始めていた――
To be continued...