姫はマのつく王子様!
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「………」
有利達を探す途中で出会った少女、ニコラの情報を頼りにやって来た寄場。
途中で収集した情報が確かなら、収容されているのは女ばかりで、婚姻関係の法を犯した者―つまり有利と同じ、ような…?―が中心だという。
――でも、それにしては。
「警備の気配が多すぎる、んだよね…」
そう呟く俺の視線の先にいるのは、眉間に細いシワを寄せ、腕組みをして背後の木に寄りかかろうとしているヴォルフラム。
多分この施設にも大量の法石とやらがあって―そしておそらく、それをここに収容されている女達が取り出しているんだろう―それが原因で具合が悪いんだろうね。
……っていうか、分かってんのかな、あれ。
「反対側のゲートも計算に入れると、軽く二百は超しそうでしたよ」
「…コンラッド」
俺が明らかに様子のおかしいヴォルフラムを眺めていると、斜面の上で偵察を行っていたコンラッドが帰って来た。
二百……か。
やっぱり、
「多いね」
「ええ……女ばかりが収容されているにしては、警備が厳重すぎる」
グウェンダルの脱獄にも、最低限六人は割く必要があった。
つまり結果として僅か十六の戦力で、二百を相手に渡り合わなければならない、というわけで。
しかもその上、一人は確実に調子が悪そうだし。
「これだけ数で劣ってるってことは…」
「そうですね。後はもう極端な揺動、つまり、かく乱しかない」
コンラッドが戻ってきたことにも反応を示さない―っていうかまず気付いてない?―ヴォルフラムの横で話す俺達。
だけど一向に反応しないヴォルフラムに、コンラッドは困ったような顔でこちらを見て。
「…ずっとこうなんですか?」
「うん」
「……」
俺の返事にもう一度ヴォルフラムを見て、ため息をつくコンラッド。
「ヴォルフラム」
「……」
「ヴォルフ」
「っ………なんだ」
やっぱり気付いていなかったらしく、コンラッドがもう一度少し強めに名前を呼べば、ビクリと肩を揺らした後コンラッドの方を向くヴォルフラム。
「無理なら早めに言ってくれないと。庇ってやる余裕はない」
「見くびるな。充分戦える」
「そりゃよかった」
明らかに強がりだと分かる態度のヴォルフラムに、コンラッドは肩をすくめてそう返し、俺は呆れたようにため息をつく。
「……ねえ」
「なんだ、しつこいな!」
「寄り掛かってるの、サボテンだけど」
「!」
俺の言葉に漸く気付いたのか、一度悲鳴をあげてから両手で口を押さえるヴォルフラム。
……やっぱり気付いてなかったんだ。
あんなに痛そうに背中にたくさん刺さってるのに。
「そういうことは早く言えっ」
「知ってるだろうと思って」
「ぐ……っ」
だってずっと寄りかかってたし?
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