姫はマのつく王子様!
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「何故そいつがここにいる」
南側の国境で待機していたフォンヴォルテール卿グウェンダルは、俺達を見てあからさまに嫌な顔をした。
……なるほど、確かにこれは有利の言う通り、コンラッドともヴォルフラムとも似てないね。
「第一…」
とそこで、グウェンダルの鋭い視線が俺へと移る。
「そっちのは何だ」
それに、ここへ押し掛けてきた俺以外の三人の顔が気まずいものへと変わった。
時は少し遡り、有利の「偽物を助けないと」宣言のあとのこと。
ごく当たり前のように俺も有利について行くとと言えば、皆一斉に驚き、そして反対しだした。
「な…何言ってるんだよリョーマ!?危ないって!それにリョーマは……お、女の子なんだし!」
真っ先に反対したのは、やはりというべきか有利で。
ちなみにギュンターもわあわあ騒いでるけど、まあとりあえず無視の方向で。
っていうか、その間とどもってるのはなんなわけ?
そんな有利に思わず呆れながらも、しかし俺はキッパリと言いきった。
「関係ない。俺も行く」
「リョーマ…」
困ったような顔で俺の名前を呼ぶ有利。
その隣で、ヴォルフラムはふん、と鼻で笑って。
「そうだ、お前はついてくるな。足手まといだ」
「ちょ…ヴォルフラム!」
その言葉や態度にムカついたから、俺もおもいっきりバカにした態度で言葉を返した。
「あんたよりは役にたつと思うけど?」
「何ぃ!?」
「…っリョーマも煽んなってえ!」
とそこで、それまで黙っていたコンラッドが口を開いた。
「…俺も反対です、リョーマ様」
『――俺は、少なくともそこの自称婚約者よりも強いよ。…それでも?』
突然英語で話し出した俺に、目を白黒させる有利。
そんな有利に、ヴォルフラムは何て言ってるんだと聞き、それに分からないと騒ぐ二人を無視して俺はコンラッドを見つめる。
有利やヴォルフラム、それにギュンターに邪魔されないようにとわざわざ英語で話してるんだから、彼らに付き合ってる暇はない。
『あんたほどの人間なら、俺の実力くらい分かってるんでしょ?』
正確にはコンラッドは人間じゃない、なんてことは置いといて。
俺はこれでも、ボンゴレファミリー十代目の一幹部なんだ。
その実力は、うぬぼれなんかじゃないはず。
『ええ…』
俺の言葉に、コンラッドも俺の考えを理解したのか、同じく英語でそう言い頷いて、一度目を閉じ。
そして俺を真っ直ぐに見つめ、ハッキリと同じ言葉を繰り返した。
『ですが俺も、反対です』
『…俺が女だから?だとしたらそれは差別だよ』
俺は女だからと特別扱いを受けるつもりも、また足手まといになるつもりもない。
だけどコンラッドは『いいえ』と首を振り。
『俺が、あなたに傷ついて欲しくないからです』
『……どういう、意味?』
その予想外の言葉に、俺は思わず言葉を詰まらせた。
『俺はあなたを初めて見た時、その美しさに思わず見とれてしまった。
そして思ったんです。あなたを傷つけたくない、傷ついて欲しくないと』
コンラッドは恥ずかしげもなく言いきると、フッとその顔に微笑を浮かべた。
『…あんたの美意識って変わってるんだね』
最近は日本人ばかりと生活してたから、ここまで直接的な――それも好意を表すようなことを言われたのは久しぶりで、少し戸惑う。
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