素数的進化論。
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「文不相応な出過ぎた欲は、我が身を滅ぼすってことだなあ゛」
こういうのを自業自得、と言うのだろうか。
「シシッマーモン気をつけなよ、強欲なんだからさ」
「ム。僕をこんな三下どもと一緒にしないでほしいね」
そんな軽口をたたきながら、彼らは次々と証拠品を押収していく。
「にしても何この任務、ちょーつまんないんですけど」
「うお゛お゛い、手ぇ休めんなあ゛」
「だって誰も殺れないし。こんなん王子のすることじゃねーっての。めんどー」
そう言って一人その場に座り込むベル。
確かに、普段率先して暗殺任務をこなし血をあびている彼にとって、これほど退屈な任命はそうないだろう。
むしろヴァリアーの幹部三人の行うような任務ではない。
役不足もいいところだ。
「あーあ。こんなことなら向こう行っときゃよかったし」
ベルの言葉通り、実は今夜、ヴァリアーには別の場所でも仕事があった。
そちらには幹部は一人もおらず、マーモンの部隊―つまりは幻術を得意とする霧属性の者たち―が行っているのだが。
「どうせ向こうだって中身はおんなじさ。むしろイライラがたまって僕の部下の一人や二人殺すに決まってる。それで後処理がめんどくさいことになって、その上綱吉にも叱られてただろうね」
スクアーロの横でふよふよと浮かびながら、マーモンがそう冷たく返す。
彼の言うとおり、ベルが八つ当たりをし、うっかり部下を殺してしまう―なんてことは今までにもあった。
そのため、それ以降なるべく彼の任務は単独かあるいは幹部の人間と組むようになっていた。
今回向こうに行っているのはマーモンの部隊の人間であり、霧属性の者たちだ。
そして霧属性の者とはつまり幻術を使える者。
そんな彼らは数が限られており、そんな理由で殺されてはたまったものではない。
「…めんどくさ」
「いいからさっさとやりやがれえ」
マーモンの言葉にその状況を想像したのか、心底嫌そうな表情でそうつぶやいたベルにスクアーロが急かす声をかければ、渋々ながらも作業を再開するベル。
つまりはまあ、怒った綱吉の説教はこの我が儘王子に我慢という選択をさせるほどには怖い―というかあまりお目にかかりたくない―ものなのである。
そして朝日が上る頃、その場には男たちの姿も彼らの乗ってきた車の姿も、そしてもちろん麻薬やスクアーロたちの姿もなかった。
To be continued...