短編
□サイコーの殺し文句
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「……ああ、」
跡部は宍戸の言葉に納得したように頷けば、その口元にニヤリ、とからかいを含んだ笑みを浮かべた。
「てめえは機械オンチだからな」
「っ…携帯くらいは使える!」
「せいぜい電話とメールくらいだろ」
「う゛…」
図星なのか、言葉を詰まらせ目を反らす宍戸。
そんな分かりやすい宍戸に一つ笑ったあと、またしても画面へと目を戻す跡部。
それを見れば、宍戸は先ほどメールを送ろうとしていた相手に電話をしようと、アドレス帳から番号を呼び出し携帯電話を耳へと当てた。
「…比べる相手じゃねえだろ」
「――あ?」
ワンコール、ツーコールと呼び出し音を聞いていれば、反対の耳に聞こえてきた言葉。
宍戸がそれに跡部の方へと目を向ければ、跡部は相変わらずパソコンの画面に向かったまま、宍戸に聞かせるでもなく呟いていた。
「第一俺と同列で並べて言うことすら間違ってる。越前…いや、リョーマは天才だ」
春のゴタゴタ以降、何気に親睦を深めた二人は、最近名前で呼び合っている跡部とリョーマ。
しかし未だあまりなれないのか、跡部は一度言い直し先を続ける。
「テニスは勿論、そういう血筋だってことは分かっている。
だが――だがあいつは、それだけじゃねえ。
…テニスはともかく、パソコン…いや、情報収集や機械の扱いにおいては、俺はあいつの足元にも及ばねえ」
「…………」
跡部景吾という人物が、ここまではっきりと、誰かを自分より上だと口にすることは滅多にない。
しかしだからこそ、彼は確かにリョーマのことを認めているのだと、強く伝わってきて。
「…リョーマは勿論、忍足にも、…宍戸にも。俺様は、まだまだ及ばねえ…」
だからこそ宍戸は、口元がほころぶのを止められなかった。
「――リョーマ、今夜はもう一人追加だ」
そしてそれを隠すことなく、いつの間にか繋がっていた電話の向こう側へと声を発する。
〔……材料は亮が買ってきてよね〕
そして返ってきたその言葉に、宍戸は笑って頷いた。
サイコーの殺し文句
(リョーマー、準備できたでーって、顔赤いけど…どないしたん?)(…まだまだだね)