素数的進化論。U
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「そしてそこで、俺たちは朝日七の両親が首を吊って死んだところと、その前に虚ろな目をして座り込んだ朝日七を見つけた」
「………」
「その後、朝日七はショックから声を失い、忍足はそんな朝日七のそばに寄り添った」
「………」
「それがあいつらの過去だ」
「………」
跡部の言葉を最後に、シンと静まり返る室内。
少し目を閉じたあと、跡部はゆっくりと立ち上がって。
「色々と考えることもあるだろうが、少ししたら戻ってこい」
そう言って、部室から出て行った。
「………知ってたんですか?」
「ああ」
宍戸を見ずに問いかけられた言葉に、宍戸も日吉を見ることなく頷いて。
「…あなた方は、一体何者なんですか」
少しの沈黙のあと、今度は日吉はまっすぐに宍戸の瞳を見て問いかけた。
「――それを知ってどうする?」
それに間をあけて返ってきたのは、日吉の期待したものでも、また予想したそれでもなかった。
「……」
「興味本位で首突っ込んで、痛い目みるのはお前だぞ」
「…沢田先輩が、教えても良いと」
「お前の考えを聞いてんだよ」
「……っ」
鋭い眼光に貫かれ、思わずびくりと体を揺らす日吉。
しかし怯んだのは一瞬で、すぐに睨み返して。
「俺だって巻き込まれてるんだ。知る権利はある。
――あんたらは、何者なんだ?」
「……」
「……」
ジッとにらみ合う二人。
そしてしばしの沈黙のあと、宍戸がフッと力を抜いて。
「分かった。降参だ」
そう言いながら両手を上げて立ち上がる。
「部活のあと、門の所で待ってろ。どうせならあいつらも一緒の方がいいだろ。様子見に行くついでに教えてやるよ」
そしてそう言って、宍戸は日吉を残し教室を出て行った。
To be continued...