小説

□今日を最後にもう恋はしない
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※大学時代の白蘭と正一の捏造










自称「未来の入江正一」と名乗る人物から手紙が届くようになってから数年たった。

手紙に書いてある通りに僕は人生を生きたつもりだった。それが誰かのいたずらかもしれないと思ったことは数知れない。

だけど手紙の筆跡というか、ある特定の文字を書くときの癖が間違いなく僕そのものの字だったり、僕しか知り得ないようなことがスラスラと書かれていたりして、手紙が届くようになって1年ほどたって、僕は信じることにした。



「未来にいる僕から手紙が届いたんだ」




と。






18になる少し手前に、僕は「未来の入江正一」から、海外の大学へ進学するようにすすめられた。


驚いたことに、突然海外へ留学しろと言われてもそんな準備ないものだろうに、運がいいことに親戚が海外で暮らしていたため、

「向こうに親戚もいるし、正一が学びたいことがあるなら行ってきなさい」

と父は許してくれた。母も特に何も言わなかったけれど、反対はしていないようだった。




その事の流れの速さに、やはり僕は、「未来にも入江正一っていう人間は存在しているんだ」と理解せざるをえなかった。









18歳の春、僕は言われた通り、イタリアのある工学系の大学の1年生にちゃんとなっていた。

イタリア語なんてよくわからないまま来てしまったけれど、全員がイタリア人というわけではなかった。

英語で話せば、大抵のことは通じた。僕と同じように日本からの留学生も数人いたし、本当に困ったことがあれば、彼らに相談することもあった。




その中で、僕は彼に出会ったのだ。

白髪の、目を引く派手さの彼に。
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