小説

□乾いた唇
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誰かに見られたらやべーだろ。 の続きだと思って読んでいただければ幸いです。付き合ってるのか付き合ってないのか微妙な2人。



もし僕が女だったら、あんなにγ先生に積極的に話しかけることは出来なかっただろう、と思う。

γ先生は競争率の高い先生だから(モテるし)、もし僕が女子だったとして、同じ女子の間をかいくぐって彼に辿り着くようなめんどくさいことはしなかったと思う。

γ先生のところへ個人的に行くような男子生徒は、化学の勉強が本当にやりたいやつしかいなかったように思う。
でもγ先生は、そりゃ化学の先生になるくらいだから化学オタクなのだろうけど、あんまり大学受験とか、そういうことに熱心な先生ではなかった。

化学といっても教科書に書いてあるようなことしか生徒には教えてくれなくて、後は自分がやりたい実験だとか、そういうことばかりやってるような先生だった。

どちらかと言えば、僕はγ先生みたいなタイプは大学教授に向いてると思う。

そのことを以前ポロッと口にしたら、

「大学の先生なんて、なるの難しいだろ。」

とか言っていた。
高校の先生だってそれなりに難しいと思うんですけど…と言ってみたら、

「俺の場合は運だよ、運。」

とか言っていた。

人生を、なあなあな感じにしか生きていない感がたっぷりだ。
だからこそ僕は彼を好きになったのかもしれない。










卒業式の日にキスしてもらったことだって、もしかしたら彼のたった一瞬の気まぐれだったのかもしれない。

あの日、もしかしたらいつもよりちょっとイライラしてただけなのかもしれない。
そう思うと、彼とキスしたことが、もう10年くらい前のことのように感じる。



あれだけしてほしかったキスなのに、いざしてもらうと、何だかあっけなかった。

…いや、そうじゃない。



あれから、彼から連絡が一切来ないことに僕はきっと腹を立てていたのだ。

「3月31日まではここの生徒だからな。」

とか言いつつ、卒業式(3月14日)にキスしたくせに…。





現在の時刻は、3月31日23時56分。
あと5分以内に、4月1日になる。

彼からきっと連絡はないだろうな、と思う。



今日は大学の入学式だから早く寝ないといけない。
時計が0:01になったのを確認してから、僕はベッドの中で静かに目を閉じた。
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