小説

□それもプレイの一つだよ
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気持ち「好きです。」の続き。
あの話が自分的にγ正の原点だったりするので、さまざまなエンディングを考えてみたい、という願望から。

読みにくいのはいつものこと。スイマセン
















あれから僕はγ先生のところへ2度行った。
一度目は、課題のプリントを提出しに。
二度目は、わからないところを質問するふりをして。


これは、僕が二度目にγ先生のところへ行ったときの話である。















___それもプレイの一つだよ
(だって好きなんだから)







僕は無言で化学準備室のドアをガラッと開けた。
いつもダルそうに猫背で座っている彼のデスクには、今は誰も居ない。
冷めてるだろうな、と思われるマズそうなコーヒーが置いてある。テストの丸付けの途中、白衣が無造作に置かれていた。

…職員室だろうか。



でも僕は、職員室で彼に会いたくない。

彼はいつだって人当たりが良くて、彼のいる場所に人が集まってくるからだ。
たくさんの人間に囲まれて、彼が笑っているのを僕はあまり見たくない。

僕がここを気に入っている理由の一つとして、ちょっとの時間だけでも、彼と2人きりになれる、という特典がある。


彼はここにはいない、と思うとちょっと心が寒くなった。

…どうせ当分帰ってこないだろう。



そう思って、僕は彼の椅子に腰掛けた。目の前には、丸つけの途中のテスト用紙。
別に、見えたからといって僕はそれを誰かに他言したりしないから、それに、このテストを見ることが目的ではない。


彼の着ていた、白衣。



僕は机にボフッと突っ伏すように、彼のいつも着ている白衣に顔をうずめた。

…我ながら、気持ち悪いことをしていると思う。
好きな先生の部屋に勝手に忍び込んで、その人の椅子に座って、着ているものに顔をうずめて性的満足を得ている。



そうだ、これは僕にとって一人プレイの延長なのだ。

この白衣さえあれば、僕は3時間くらい自分の性的欲求を満たしていられる自信がある。
この白衣を抱きしめて、彼のことを考えているだけで、いつのまにか心も満たされているような気がする。


脳内の、海馬ってところ。
理性を司るそこが、溶けていくような感覚


僕と彼の間に、理性なんていらないんだよ

僕は、僕はいつだってこんなキモイ悪いことしか考えていないんだから。









「オイ、誰だ。」


ガタッと立ち上がる。
彼が、いた。



「…なんだ、入江クンか。」

γ先生はめんどくさそうに、吸っていたタバコを灰皿に押し付けた。
スーツだ。彼が、スーツを着ている。



「どうしたのかな、今日は。」

先生は奥のほうからもう一つ椅子を持ってきて、そこに腰掛けた。



「わからないところを質問しに来たんです。」

「そうか、どこだ。」

「というのはただの口実で、先生に会いにきたんです。」

僕は抱きしめていた白衣を、もとあった場所に置いた。



「まぁ、俺に会いに来るのはいいけどな、あんまり先生の机をジロジロ見ちゃいけないな。他の生徒のテストなんかも混じってるんだよ。」

「僕は見えたからと言ってそれを他言したりしません。だいたい僕はいつだって化学のテストは100点です。あなたに気に入られたいから。」

「この前0点取ったのはどこの誰だったかな〜?」


先生はニヤリとしながら、床を見ていた。
床じゃなくて、僕の目を見てよ!!




「僕、先生に抱きつきたい。」

「そりゃまたどうして。急だな。そこにある白衣をさっきまで俺の代わりだと思って握り締めてたんじゃないのか?」


…やっぱり気づかれてた。


「だって今日、先生はスーツだから。スーツなんてめったに着ないじゃないですか。スーツ萌えです。普段そんなもの着ないのに。」

「萌え?なんだそりゃ」

先生は笑いながら、僕の頭をポンポン、となでて、


「仕事しなきゃならね。明日までにそのテストの丸付けしなきゃいけねーんだ。」

「抱きつくのは?」

「今はダメだ。」

「ならいつならいいんですか。」

「お前が大人になって、一人で自立できるようになってまだ俺のことが好きだったらいつでも来い。ウエルカムだよ。」

「その頃、僕は生きていないかもしれない。」

「なんでだよ!」



先生は豪快にハハハ、と笑いながら、僕を椅子から引きずりおろした。
そして自分が座っていたかたいパイプ椅子に僕を座らせた。


決して帰れ、とは言わない。
いつまでもここにいていい、だなんて勘違いしてしまう。







「大人になるくらいなら、死のうと思うんです。あなたのことが好きだって気持ちまで失ってしまいそうになる。僕はあなたのことが好きだ。大好きだ。めちゃめちゃにしてやりたいくらい好きだ。」


先生はそれっきり、丸付けに集中したのか、僕の問いかけに「うん」「さぁな」「わかるわかる」しか応えなくなった。





つまらない、つまらない








でもあの白衣から、タバコのにおいがちょっとした
実験で塩酸でもついたのか、ちょっと穴の開いた小汚い白衣。

先生の、匂い



僕はそれを脳内にしっかりと記憶した。


今日は家に帰ったら、一人プレイだ
白衣の代わりはないから、布団を抱きしめながら、先生のことを考えよう。

ベッドの上で。

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