彩雲国物語
□運命
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「はぁ…はぁ…」
「待て!貴様、どっかで見たことあると思ったら、何ヶ月か前の奴じゃねぇか!?」
「ひ、人違いです〜」
「嘘をつくんじゃない! 明らかに貴様は俺の計画を邪魔した、あの小僧だろう!俺の目は誤魔化せんぞ!!」
何ヶ月か前の出来事を持ち出されても、こちらはとんと覚えていない。それもそのはず、そういうことをしたのはもういない“もう一人の自分”なのだから。
「うわっ!」
後ろを振り返りつつ走っていたので、曲がり角で誰かにぶつかって尻もちをついてしまった。
「すみません。急いでいたもので……」
いたた…と腰を擦りつつ相手の顔を見ようと顔を上げると、その派手な風貌に惹きつけられた。
「なっ…龍蓮さん!!」
「心の友其の二ではないか。また“変な者達”に追われているのだな。此処で逢ったのも何かの縁。私に任せろ」
「貴様にだけは言われたくないわ!!そんな頭にいろいろつけやがって〜!ナメてんのか!!」
影月は苦笑した。頭には羽根や蜜柑の枝が刺さっており、さらに背には大根や白菜が見える。また冬の“白の野菜”がテーマなのだろう。相手の言い分も尤もである。
「行くぞ」
手元に武器となるものが無かったせいか、龍蓮は懐からいつも吹いている笛をだして構えた。
「貴様ぁぁ!馬鹿にしてんのか!!」
そう激怒した相手が龍蓮に向かって切りつけて来る。影月は見ていられなくて瞳をぎゅっと閉じた。すると…。
「ふんっ」
「ぐわぁぁぁぁ!!!!」
何が起こったのか、先程まで笛とは違う、きちんとした武器を持っていたので優位に立っていたと思われる相手が奇声を上げて倒れた。
「さあ、いつ起き上がって追い駆けてくるか分からん。急ぐぞ」
「あっえ……」
これから邵可邸に行くつもりだったのだが、腕を引かれたために、行き先も分からないまま強制的に連行されてしまうこととなった。