その果てに

□美味しいもの(☆)
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陸抗は上機嫌だった。
先程故郷から送られてきたばかりの荷を胸に抱え、普段の彼からは想像できない位の笑顔で目的の部屋へと急ぐ。途中話しかけられたりしたが「申し訳ありません。急いでおりますので」と言ってしまうほどに。

「幼節!一緒にお茶でもいかがですか?美味しいお菓子が手に入ったのです。」
「申し訳ありません叔子殿。急いでいるのです」

その後羊コは杜預に突かれるまで動かなかったことは言うまでもなく、特製幼節人形を抱いて泣いていたとか。

陸抗が急いでいる理由。それはたった一つ。

部屋の前に着くと深呼吸をして息を整える。そうして包みをギュッと抱きしめるとトントンっと、扉をノックする。すると「入れ」と声が聞こえ陸抗は「失礼致します」と言って扉を開けた。


「どうした?」

部屋の主…トウ艾は寝台に腰掛け書簡を読んでいた。顔を上げないまま黙々と書簡を読みふけっている。
陸抗はパタパタとトウ艾に近付き胸に抱いていた包みを開く。

「トウ艾殿に召し上がっていただくて…」
「俺に?」

陸抗の言葉にようやく顔を上げたトウ艾が見た物は色鮮やかな砂糖菓子。

「父上が送ってくださったのです。トウ艾殿にも召し上がって頂きたくて持って参りました。甘い物は大丈夫ですか?」

首をコテンと横にする陸抗の姿に苦笑しつつ「大丈夫だ」と返すと、陸抗は「良かった」と言って微笑んだ。





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