その果てに

□基本形
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熱い日差しがギラギラと照りつける夏。
こう暑くては外から兵士達の威勢の良い声も聞こえない。

風通しの良い室内でゴロンと横たわりながら書簡を読んでいたトウ艾は、ふと視線を感じ読んでいた書簡から顔を上げる。すると、隣で書簡を読んでいたはずの陸抗が自分の顔をジッと見つめていた。
瞳が合うと陸抗はすぐさま書簡を手に取り何食わぬ顔で視線を書簡へと移す。

「…またか‥」

ふぅっと吐息を漏らしながらトウ艾は下顎を撫でる。
ジョリっとした感触。それは毎朝剃っても生えて来る、髭。伸ばしているわけではないがいつの間にやら生えてきて触るとジョリジョリする。

以前陸抗に触らせてやったら何故だか大変喜ばれ、それ以来何度か触らせてくれと頼まれるようになった。別に減るものでもないので頼まれる度に承諾していたらいつの間にやら懐かれた。

そうして気がついた時にはこの幼く見える呉からの使者に心を奪われていた。トウ艾は顔に似合わず可愛いものが好きだったのだ。
「好きだ」と伝え思いを通じ合わせることができたのは遂先日のこと。
そこまで辿り着くには色々と苦労した。それはもう、いつ死んでもおかしく無いほどに。

陸抗の親友である羊コに「手を出したら大地にかえしますよ」と何度も笑顔で脅され、杜預には「トウ艾殿、本気で考えな直された方が。いやむしろ考えなおして下さい!俺の平和の為に!!」と泣き付かれ。

それでも曹操(楽しそうだから)の助けを借りようやく結ばれた思い。

照れたように書簡から顔を上げた陸抗を手招きするとちょろちょろと近寄って来た。




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