その果てに
□その果てに (長編)
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握り返された大きな手
「俺がお前を護ってやる。だから…」
忘れてしまえ
冷たい雨が降りしきる
雨と一緒に涙も地に染み渡る
冷え切った身体をギュッと抱きしめる。自分も濡れているからあまり変わらないとも思ったが、少しでもこの華奢な少年を雨から守ってやりたかった。
「俺はお前を裏切らない…俺のものになれ!」
少年はただ青年の胸に顔を埋め泣いた。
「直ぐに返事をくれとは言わない。だから、考えてくれ…」
少年の顎を捉えてそっとその柔らかい唇に口付ける。
触れ合った唇は冷たくて啄ばむ様に何度も唇を合わせ、震える手が背に回りまるで何かを求めるかのように強く抱きしめる。
その後は少年が気の済むまで抱きしめてやった。
冷たい雨が降りしきる
奪われたのは体温だけじゃなく…
笑って欲しかった
春に咲く花の様に
包んで欲しかった
君の優しさで
純粋で穢れを知らない
意地っ張りで諦めを知らない
そんな君のことを
愛してる
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